ビジネス

2020.06.26 07:30

コロナで広告はどう変化? ゲッティイメージズやピンタレストの視点


ニューノーマル時代、ブランドに求められる「人間らしさ」とは?


広告・マーケティング業界の課題をグローバルな視点から探求する「グローバルキーノート」のセッションでは、広告会社グループ「WPP」CEOの Mark Readが「ブランドがビジネスの根幹を見直す機会だ」と述べたのが印象的だった。

パンデミック宣言が出された直後は、多くのブランドが大々的な広告キャンペーンを控え、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーを支援するなど、CSR活動を通して企業の価値観や姿勢を示した。私たちは知らず知らずのうちに、危機的状況におけるこうしたブランドの姿勢を注意深く観察し、時に共感し、ブランドイメージを心に刻んでいたのではないだろうか。

だとすれば、コロナ禍においてブランドは社会に貢献し、より良い未来へ導いてくれる存在として映っていたといえるかもしれない。そして、ブランド側も自分たちのあるべき姿を模索していたのではないだろうか。

また、広告エージェンシー「160OVER90」のSeth Matlinsが「ブランドがより人間らしく行動する必要性」をテーマにしたセッションで投げかけた次の言葉も、ここに記したい。

「この不安定な状況の中で、困っている人がたくさんいる。あなたのブランドは、そんな人々の助けになりましたか?ブランドはいま、共感を求められている。ブランドは今まで以上に人間らしくふるまう必要があるのだ」


NIKEの「Play inside, Play for the world」というメッセージは共感を呼んだ(Getty Images)

人間の温かみを感じさせるようなコミュニケーションは、コロナショック以前からブランドに求められてはいたが、コロナショック以降は、それも単なるポーズでは通用しなくなり、本質的な行動や表現が求められるようになったのではないかと予想される。

例えば、NIKEの「Play for the world(世界のためにスポーツしよう)」というウェブ動画は、自宅でスポーツをする人々のリアルで人間味あふれるシーンを映し出し、似たような状況に置かれている私たちの共感を呼んだ。

日本での事例として記憶に新しいのが、「今はみんなで会えないけど、歌は歌える」というテーマで新しい日常を描いたポカリスエット「NEO合唱」のCMだ。



新型コロナの影響によってリアルな場では集まって合唱できなくなってしまった中高生たちが自撮りした映像は、自宅で過ごす一人ひとりの生活が切り取られており、「乾きを力に変えてゆく」というポジティブなメッセージと共に、外出自粛で気分が塞ぎがちだった人々の間に共感を巻き起こした。

また、モバイル画面共有アプリの「Squad」がテレビや映画を一緒に見ながら友人とリモートでおしゃべりができるサービスを展開し始めたり、友人と一緒にECでバーチャルショッピングが楽しめるサービス「Squadded Shopping Party」が立ち上がるなど、オンラインにおける人間味あるコミュニケーションに注目が集まっている。

今後、「ウイズコロナ時代」から「アフターコロナ時代」へと向けて状況が変化していくのだとすれば、マーケティング活動における「人間らしい温かみのあるコミュニケーション」は、これまで以上に重要になっていくだろう。

文=田辺敦子

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