経済・社会

2020.06.27 07:00

コロナ禍で流通する食肉、安全性は保たれているのか?

Photo by Paul Kane/Getty Images)

新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以降、米国内では数多くの食肉加工場が、感染の“ホットスポット”になっている。

中西部のアグリビジネス関連の情報を専門に扱う非営利団体、ミッドウエスト・センター・フォー・インベスティゲイティブ・リポーティング(Midwest Center for Investigative Reporting)のデータによると、6月16日までに33州の食肉加工場238カ所で2万5000人の感染が確認されており、そのうち少なくとも91人が死亡しているという。

そのほかドイツでも、食肉大手テンニースの食肉処理場で従業員1000人以上が感染。また、英国ではウェールズにある食鳥処理場で75人が感染したことが報告されている。

こうした事態を受け、米国でもその他の国でも、従業員が互いに物理的な距離を保てない作業環境が感染の拡大につながっているとして、食肉処理場に対する批判の声が高まっている。

多数の感染者が出た食肉加工場は一時閉鎖され、清掃や消毒が行われる。だが、感染した従業員が処理した食肉の多くが、流通していることは間違いない。そうした食肉は、購入した消費者にとってのリスクとはならないのだろうか?

コロンビア大学公衆衛生大学院の感染症・免疫学センターのウイルス学者、アンジェラ・L・ラスムセン博士は、「食品を介した感染が起きていることを示す証拠はない」と話す。

大半の場合、食肉は危険な微生物(鶏肉に多いサルモネラ菌、豚肉に寄生する有鉤条虫など)を処理するため、加熱調理した上で食べられている。これらの有害な微生物は、熱によって死滅し、人間の健康に危険をもたらすことはなくなる。

米疾病対策センター(CDC)は、牛肉や豚肉、羊肉、魚の場合は63℃、ハンバーガーなど牛ひき肉を含むものは71℃、鶏肉の場合は74℃を超える温度で加熱調理することを奨励している。

また、世界保健機関(WHO)は、56°Cで15分間加熱すればウイルスの感染力はほとんどなくなるため、たとえ生肉の状態で新型コロナウイルスが付着していたとしても、推奨されている温度で調理すれば、感染の危険性はほとんどないとしている。
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編集=木内涼子

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