1981年、「FM-8」という8ビットパソコンを発売して以来、富士通は企画からサポートまで自ら行うという一貫体制で、お客様の要望に対応してまいりました。その貢献をより一層強固なものにすべく、2016年2月、富士通クライアントコンピューティングが新会社としてスタート。「あらゆる人・あらゆる場所で発生する、あるいは必要とされるコンピューティングをすべてまかなうことにより、お客様の豊かなライフスタイルに貢献する」をモットーに、パソコン、タブレットを中心としたユビキタスプロダクト製品を提供しています。
僕が富士通に入社したのは、まさに「FM-8」の発売年です。そのころからずっと続いている趣味が「オーディオ・ビジュアル(AV)」。大学は理工学部ですが、僕らの世代で特に電気系に進む人はたいがいオーディオマニアかアマチュア無線マニアでした。当時はお金もなく、材木商を営む親戚から要らない材木を融通してもらい、自分なりに音を研究してスピーカーをつくったり、コンデンサーやコイルを買ってアンプをつくったりしていました。
そのスピーカーを20年以上使っていたのですが、先日もっとよい音の出るスピーカーに出合ったんです。富士通からスピンアウトしたタイムドメイン社の製品で、逆さまにしたジェットエンジンのような風貌なのですが、喩えるならバンドメンバーそれぞれの立ち位置や、演奏する彼らの表情まで見えるくらい立体的な音が出る。ひどく感動して、ビートルズのリマスター盤などを夜な夜な聴いています。
週末は山を走ります。神奈川県の三浦半島に家があるのですが、裏が獣道と言っていいほどの登りがいのある山で、90年半ばから散歩をするようになりました。自然界で発生されるオゾンを含んだ空気を単位時間あたりにいちばん多く吸い込めるのは山を歩くことなんです。そのうち歩いても汗をかかなくなったので、走るようになりました。いい汗をかくと、翌週ずっと心が穏やかで、余計な発言をしたりつまらない言い争いをしたりせずに済みます。体力維持とともに、精神面でもよい効果がありますね。
社長になったことで、がらりと変わったことはありません。それよりも09年に役員に就任したとき、「これからは人のために」ということを意識しはじめました。変な話ですが、僕はそれまで「死んでもゴルフはやらない」と言い続けていたのに、役員就任を機にゴルフを始めた(笑)。これは本当に周りに驚かれました。自分の好き嫌いを物差しにするのではなく、俯瞰や調和という視点を大事にする、それが上に立つ者の宿命ということでしょうか。
座右の銘は「人は幸せでないと、力が出ない」です。知識経営の生みの親と言われる野中郁次郎先生が講義でおっしゃった言葉なのですが、趣味でも稽古でもスポーツでも好きなことをして幸せを感じることが、仕事をうまくいかせるコツのひとつではないかと。夢は「森を買うこと」。昼は山道をひとり走り、夜はAVルームに籠もって好きな映画を見る。そんな将来のためにも、いまは社長として社員が楽しく幸せに働ける環境を与え続けたいと思います。