あの低いクルマとは、ポルシェの看板車種、911だ。1963年以来モデルチェンジを経ながら現在にいたるスポーツカー。911はクルマ好きの憧れ、と思っていたけれど、あるひとたちにとって、ポルシェとはSUVを意味するのだ。
歴史的にポルシェは、リスクヘッジのため、911以外のモデルをラインナップに加えようとしてきた。特筆すべき成功例が、2002年に初代が発表されたカイエンである。その理由を当時ポルシェでは「SUVでなくスポーツカーとして作ったから」としている。
大きくなりつつあったSUVのマーケットに、他にない個性を持つ製品を、いいタイミングで投入した、ということだ。バリエーションの多さも人気の理由である。
例えば、パワフルなモデルが欲しい向きには、カイエン・ターボ。現在のモデルは、18年に3代目としてモデルチェンジした。3996ccV8エンジンは、従来より30馬力パワーアップして550ps(404kW)に。最大トルクは2000rpmと低い回転域から発生するようにして、アクセルペダルを強く踏みこまなくても十分な加速性能を実現している。
岩のように剛性の高いシャシーと、俊敏な操縦性を持ち、そう、まるでスポーツカーのように走る。同時に、環境性能にも配慮をみせているのだ。
これまでポルシェが開発したモデル、例えば、4気筒の924シリーズ(75年)はバランスがよかったもののパワー不足だった。8気筒の928(78年)はデザインの傑作だけれどハンドリングを快適志向に振りすぎた……。911をメートル原器のようにして、どれだけ差別化するかが開発の原点にあった。
カイエンは、そんな思惑から離れ開発された。そこが強みである。911なんて知らなくても、十分にポルシェの魅力が堪能できる。それが成功の理由だろう。
PORSCHE Cayenne Turbo
駆動形式 : 全輪駆動
全 長 : 4925mm
全 幅 : 1985mm
全 高 : 1675mm
最高出力 : 404kW/550PS
価 格 : 19372222円
問い合わせ : ポルシェ カスタマーケアセンター(0120-846-911)
【COLUMN】ニューヨークと、ポルシェ911の姿を撮り続けた人物 美しいストーリーは語り継がれる
クルマと写真、あるいは写真家は密接な関係にある。ポルシェでも同様。ここに掲げた1枚は、エルトハルト・ミヒャエル・ペーター、またの名をエド・ピーター氏によるものだ。1960年代から70年代にかけて、マンハッタンを中心にポルシェ911の写真を撮り続けた。赤いタルガの背景にはハイライズが並ぶ。いい感じだ。
すぐれた写真家は風景のなかにクルマを写り込ませることが多い。ロバート・フランクしかり、濱谷浩しかり。クルマは時代を切り取るためのいい“道具”だからだ。
じつはエド・ピーター氏は、当時の米国ポルシェの責任者。日曜になると、エディクサ(カメラ)を持って、ポルシェで出かけるのが趣味だった。
「911に好きなアングルなんてありません」。2019年に没したピーター氏は生前語っていたそうだ。「どの角度も美しいのです」。こんなポルシェ愛にあふれたひとの逸話を、ポルシェでは記録している。
【連載】クルマの名鑑
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