グローバルを意識せよ
最近はROEをはじめとした経営指標について海外投資家からの要求水準が高くなってきています。それは、日本企業を見るときの比較対象がグローバルになってきたから。もはや残念なことに日本株だけに投資する海外投資家は激減し、日本株はグローバルに投資する中での一つの選択肢でしかありません。例えば、昔はトヨタであれば、ホンダや日産と比較していればよかったのですが、現在はテスラやダイムラーなどと比較しなければならない。
そういう意味において、外国人投資家から魅力的に見えるのは、テクノロジーや機械、コンシューマー系あたりのセクター。グロ ーバルに競争力があるからです。あとは時価総額の高さ。いまやGAFAだけで日本株全体の時価総額に迫る中、時価総額の小さい日本企業は流動性の低さとあいまって投資効率が悪いからです。
田中裕喜◎みずほ証券コーポレート・ファイナンス部IR戦略室長。2009年、京都大学大学院理学研究科修士号取得、UBS証券に入社。三菱UFJモルガ ン・スタンレー証券を経て2017年にみずほ証券に入社。2019年より現職。
中長期視点で、 日本の価値を活かす
IRは一義的に投資家向けのものなので、「企業価値向上」や「株主価値向上」、それを実現するために、認識すべき資本コストやキャッシュフローの創出と還元という考え方はこれからも変わらないと思います。ただ、時代は変化していくものであり、その中で最も留意すべきなのは時間軸です。時間軸を短期ではなく、中長期に置くときに「自分たち自身がサステナブルに成長したい」だけではダメ。地球環境をサステナブルにするものでないと、それと同期して成長することはできません。
経営の中に社会の「サステナビリティ」という視点が入ってきたのは当然の流れです。一方で日本企業に対して期待することは、グローバル企業が必ずしも優位にあるとは言えない「現場力」や「人」を見直すことです。長期でこれを積み上げることが真の企業価値になるでしょう。
佐藤淑子◎一般社団法人日本IR協議 会専務理事。1985年、日本経済新聞 社入社。93年、日本IR協議会に出向。主任研究員、首席研究員を経て、15年6月より現職。著書に『IRの成功戦略』(2015年、日本経済新聞出版社)など。