秦「いまもかなり怒ってる感じ?」
成田「いえ、無口な感じの人で、口調も淡々としてました」
秦「それで署長のコメントについては?」
成田「署長のコメントを見て『これは組織の問題やな、と思ったわ』と言ってました。『自分に、やった、と無理矢理うその自白をさせて、その揚げ句に、今度は署長が嘘をつきおった』『結局、警察の連中は上っ面だけ、自分たちを守ることしか考えてない』と言ってました」
秦「そのほかは?」
成田「防犯カメラに映った犯人の映像を見せられて『似ているのは口ひげと野球帽、それだけですわ』と、あきれてました。『それだけで逮捕したんですよ』『それだけで逮捕できるんですか?』『おかしくないですか?』って何度も言ってました」
西山さんの事件は「人ごとじゃない」
自白偏重主義の司法の弊害がここにある。自白を取りさえすれば、という意識が強いがために、証拠の吟味、検証が軽んじられる。
秦「西山さんの事件のことは?」
成田「弁護団から聞いて『あの刑事が別の事件でもやってたのか』と驚いたそうです」
秦「どう思ったって?」
成田「あいつならやりかねんと思った、と。西山さんのことは『本当にかわいそうだと思った。人ごとじゃない。協力しようと思った』と話してました」
秦「陳述書の内容は、あの通りでいい?」
成田「『弁護士に話した通り書いてあるからあの通りだ』ということでした」
成田記者からは、改めてこの時の取材で男性が語った言葉について、次のようなメモが送られてきた。
〈刑事の風貌は、162~163cm。パンチパーマで強面(こわもて)な感じ。後からパチンコ店にやってきて「ここで話をしていてもラチがあかんで署に行こうか」と言われて虎姫署に行った。取り調べ室は1対1で、威圧感があった。最初から決めつけの捜査で、向こうとしては私に自白させて手柄をあげたいように見えた。
トイレに行くのは「あかん」の一点張り。証拠を隠すと思ったのでしょうか。「やっていない」と行っても聞く耳を持たなかった。ずーっと怖い感じで、うその自白をしてから優しくなった。「はい、逮捕」は「一丁上がり」みたいな感じ。1つ仕事を終わらせたような言い方でした。
トイレから戻った後、「このあと否認し続けたら大丈夫や」と思って、実際に誤認逮捕になったけど、西山さんは本当にかわいそうに思う。他人事じゃない。だから協力しようと思った。
逮捕の前、防犯カメラの映像を見せられたけど、似ているのが口ひげと野球帽。後から思ったけど、私が当時着ていたのは半袖、映っていたのは長袖だった。
同じような人はたくさんいると思う。どこかの署で、ICレコーダーに(刑事の暴言を)録音していた人がいたけど、よそでも同じようなことがある。私は氷山の一角。どこでもあるやろ。ただ、あんな取り調べがまかり通っていることに驚きました〉