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2020.06.04

10分未満の短編動画が大人気! 米テック界No.1女性富豪のスタートアップ

Quibi 共同創業者兼CEO メグ・ホイットマン(左)


18億ドルもの資金調達


Quibiのはじまりは17年11月、ホイットマンがHPE・CEOを辞任すると発表した直後にさかのぼる。2人は、1980年代末から90年代はじめにかけて、ともにディズニーで働いていたとき以来の知人で、カッツェンバーグが誘った夕食時の話からはじまった。

カッツェンバーグは「YouTubeとスティーブ・ジョブズが生んだiPhoneの2つが登場したことで、生まれた場所に切り込もう」と構想を熱っぽく語った。潜在市場規模が大きく、時代の流れに沿い、独特のニッチな需要を満たしていると感じたホイットマンも「実は、私も新しくスタートアップをはじめようと考えているの」とタッグを組んだ。

そして2人は、サービス展開にあたり十分な資金調達を行った。18年8月には、アリババやディズニー、ソニーなどから合計10億ドルを調達。また、コロナウイルスにより米国が機能不全状態に陥った20年3月には、7億5000万ドルの追加投資契約を取りまとめた。

ホイットマンは「これほど急速な環境の変化はいままでに経験したことがありません。日々刻々と状況が変わり、新しいデータや新しい懸念事項が次々と出てくるのですから」と言う。

新番組や映画の製作が止まっている現状下、Quibiは昨年9月から番組製作を前倒しで行い、ケビン・ハート、ジェニファー・ロペスが出演する番組の撮影を終えるなど、新コンテンツを豊富に持っている点も有利な立場にある。

ただ、ハリウッド関係者の中には、「Quibiの発想は最悪だ」と考えている人も多い。視聴者が娯楽コンテンツに事欠かず、多くが無償で利用できる時代に、誰がお金を払ってもうひとつの娯楽コンテンツを利用するのか、と。そして、動画配信メディア業界の優良企業、ネットフリックスは、北米6700万人以上、米国外に1億人以上の視聴者をもつ「一人勝ち状態」。さらなるシェア拡大を目指し、今後数年間でコンテンツ制作に200億ドルを投じる予定があるからだ。

とはいえ、とあるハリウッドの大手芸能プロダクションの役員は言う。「ジェフリーが人生でフルスイングしたことは数えるほど。そのたびに場外ホームランを放ってきたからね」。ホイットマンも、社員30人、売上高400万ドルだったeBayを、10年後の退社時には社員1万5000人超、売上高80億ドルまで成長させた連続起業家兼経営者だ。

この富豪であり、シニア起業家でもある2人のタッグの「大胆で果敢な賭け」の結果に注目が集まるが、先の芸能プロダクション役員の言葉を借りるならば「この30年間、ジェフリーを信じて、ひたすら彼に賭け続けていたら、さぞかし大金持ちになっていたと思うよ」。


メグ・ホイットマン◎1956年生まれ。eBayのCEO、ヒューレット・パッカード・エンタープライズのCEOを歴任。2018年、ジェフリー・カッツェンバーグ(冒頭写真右)とQuibiを創業。2020年のビリオネアランキング590位。



これまで世界をリードしてきたビリオネアや起業家はこの危機にどう立ち向かったのか。メグ・ホイットマンのほか、『「過去は忘れてください」孫正義が独占告白、ウィーワーク、ウーバー、戦術の悔い』『リモートワークの救世主、ズーム創業者が語る「コロナ騒乱の舞台裏」』『世界5位の富豪がハワイでつくる「実験ユートピア」ラリー・エリソン』など、注目のForbes JAPAN7月号のお求めはこちらから。

文=ドーン・フミレフスキー 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=波多野理彩子

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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