この男児の40歳の母親は出産前24時間、筋肉痛や食欲減退、疲労、乾いたせきや39度の熱など、新型コロナウイルスの症状を示していた。
母親は出産時には呼吸補助を必要としなかったが、医師らは空中・飛沫(ひまつ)・接触の予防措置を取った上、局所麻酔で半緊急の帝王切開を行った。
医師らは新生児を十分に洗った後、母親と接触させる前の生まれた日と生後2日目、7日目に鼻咽頭スワブを使って検体を採取した。その結果、RT-PCR検査では検体3つ全てから新型コロナウイルスの陽性反応が出た。また、新生児の血漿(けっしょう)は生後4日目に陽性、便は生後7日目に陽性反応が出た。
研究者らは、このケースでは主に3つの理由から先天性の感染が考えられると述べた。その理由とは、帝王切開を行ったので新生児は膣(ちつ)分泌物に触れていないこと、生まれる前に膜が傷ついていなかったこと、新生児は最初の鼻咽頭スワブ検体採取前に母親と直接肌を触れ合わせていなかったことだ。
この新生児は、オンタリオ州トロントの病院を生後4日目に母親と一緒に退院。母親は7日目に定期検診で来院し、医師によると子どもには熱やせき、授乳の問題などは見られなかった。親子からは再度検体が採取された。また医師たちは、生後30日目に電話で追跡調査も行った。母親によると、子どもは元気にしているとのことだった。
研究者らは、新型コロナウイルス感染が確定している、あるいは疑われる女性から生まれた子どもは生後なるべく早い段階で、十分洗浄後に鼻咽頭や胎盤、臍帯血(さいたいけつ)を検査すべきだと述べている。また、検体を取ったタイミングや採取方法、検体の種類を慎重に記録し、新生児の感染が先天性、分娩(ぶんべん)時、分娩後のどの時点かを見極められるようにすることを勧めている。
この事例研究は、5月14日に発表されたカナダ医師会雑誌(Canadian Medical Association Journal、CMAJ)に掲載された。