移動でなく楽しみのためのクルマとして最初に作られたのは、バルセロナのイスパノ=スイザによる「アルフォンソⅩⅢ(13)」(1912年)と言われる。いまは高級クラシックカーの世界で人気が高い同社が、当時のスペイン王妃の注文に基づき、レースカーを街乗り用に改造したモデルだ。
おそらく、そのクルマに乗ったアルフォンソ13世の喜びと、いま、私たちがマツダロードスターからフェラーリF8トリブートにいたるまでスポーツカーと呼ばれるモデルを操縦したときの感情には大きな違いがないだろう。エンジンパワーをダイレクトに感じることができる操縦性や、美しいスタイルなど、普遍的な楽しみは、ずっと変わっていないと思う。
そこにあって、ホンダは新型「NSX」で新しいスポーツカー像を提案してくれた。最大の特徴は、ハイブリッドシステムにある。ミドシップのV6エンジンと電気モーターで後輪を駆動。加えて、2基の電気モーターを前輪用に備える。
操縦感覚は超をつけたいぐらいスムーズ。軽くアクセルペダルを踏み込むと間髪いれずにクルマは速度を上げる。モーターで4輪の駆動力を制御することで、安定したコーナリングを実現したのも特筆点だ。
ドライブモードセレクターで、EV走行中心の「クワイエット」から、エンジンを積極的に使う「スポーツ」に切り替えると、すばらしい加速感。さらに「スポーツプラス」へと進めると、くいくいと曲がれる操舵特性が加わる。427キロワットのシステム最高出力と646ニュートンメーターのシステム最大トルクの数値はダテではない。
燃費を抑えて環境性能も考慮。(大排気量エンジンのままでは)スポーツカーに未来はない、という懸念を吹き飛ばしてくれる。昔からの楽しみの本質を現代的に表現しているのだ。これこそ、本当の意味での革新だと思う。
HONDA NSX
駆動形式 : 4WD(ハイブリッド)
全 長 : 4430mm
全 幅 : 1810mm
全 高 : 1170mm
最高出力 : 427kW [646Nm] /6500-7500rpm
価 格 : 24200000円(消費税込み)
問い合わせ : お客様相談センター(0120-112010)
【COLUMN】技術屋としてのホンダが秘める可能性はさまざまな形で具現化し、我々の生活を支える
ホンダのおもしろさは、製品が四輪と二輪に留まらないところにある。耕うん機、除雪機など幅が広いのだ。2018年、英国グッドウッドでの「フェスティバル・オブ・スピード」では、同社の芝刈機の40周年を記念したカスタムモデル(最高時速241キロというモンスター)を走らせて、やんやの喝采を浴びたものだ。
もうひとつ、ユニークな製品がハンディタイプ蓄電機「LiB-AID(リベイド)E500」。内燃機関でなく充電式の377ワット時のリチウムイオンバッテリーによるクリーンさと、正弦波インバーター技術により「高品質」とメーカーが胸を張る電気が特長だ。電気の質の影響を受けやすいコンピュータなどの製品の使用にも向いていると謳われる。2019年には音響機器(アンプリファイヤやCDプレイヤー)専用の機種を限定発売して、たちどころに売り切れた。発電機との並列接続もできる。価格は88000円。
【連載】クルマの名鑑
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