これは驚くような知らせではない。いずれにせよ、買収できる見込みはかなり低かった。私は2020年4月半ばに、この2人がメッツを絶対に買収できない理由を4つ挙げた。複数の情報源によれば、ロドリゲスとロペスの買収話はまったく進展しなかったようだ。2人は、複数の投資家に話を持ち掛けたが、何の確約ももらえなかった。
なぜかと言えば、2人は投資額としてわずか5000万ドルしか提示しなかったにもかかわらず、ロドリゲスがメッツのマネージング・パートナー就任を望んでいたからだ。買収パートナーとして名前が挙がっていたのは、投資会社クオーグ・キャピタル(Quogue Capital)の創業者ウェイン・ロスバウム(Wayne Rothbaum)や、台湾の実業家リチャード・ツァイ(蔡明興)だ。しかしそうした富豪は、メッツに何億ドルも投資した上に、チームの指揮権をロドリゲスにみすみす渡してしまうようなことは絶対にしないだろう。
メッツの資産価値が、フォーブスの発表どおり24億ドル(3億5000万ドルの負債を含む)だと仮定すれば、ロドリゲスはチームの指揮権を求めておきながら、資産価値のわずか2%強しか投資しようとしなかったことになる。たったそれだけしか金を出さない投資家に采配を振るわせるのは危険だろう。
1998年にMLBの球団拡張の一環として誕生した「アリゾナ・ダイヤモンドバックス」を思い出してほしい。同チームで最初にマネージング・パートナーを務めたのは、資産のごく一部しか保有していない実業家ジェリー・コランジェロ(Jerry Colangelo)だった。コランジェロが選手を集めて結成したチームは2001年、創設してから四度目のシーズンでワールドシリーズを制覇した。
しかし、コランジェロが選手獲得に多額を投じた結果、チームは大きな損失を計上。投資家たちはさらに資金を注ぎ込むことを余儀なくされ、ダイヤモンドバックスは山のような負債を背負う羽目になった。他人の金となると、つい財布のひもが緩んでしまうものだ。
メッツは、同じナショナルリーグ東地区所属の「ワシントン・ナショナルズ」や「フィラデルフィア・フィリーズ」、同じニューヨークに本拠地を置く「ヤンキース」などと競争するために、多額の資金を投じなければならない。ロドリゲスがメッツ買収のために頼ろうとした資産家たちはそのことを認識しており、わずか5000万ドルしか出さない彼に、チームの実権を任せる気にはならなかったのだ。