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2020.05.16 11:00

僕が「ヒーロー投資家」になるまで──長友佑都

ガラタサライSKに所属する長友佑都

「人生のゴールに少しでも近づけるのであれば、畑違いのことにも挑戦しますし、失敗することも厭わない。僕は、僕の人生を生きます」──インタビューの最後に、彼はそう告げた。

日本代表歴代2位となる国際Aマッチ122試合出場を記録するなど、「代表の顔」として日本サッカーを牽引する長友佑都。

しかし、彼が「日の丸を背負ってピッチを駆け回るアスリート」以外の顔を持っていることを知る日本人は少ない。長友は、経営者であり、投資家でもある。

「アスリートは競技だけに集中していればいい」といった論調があるなかで、どうして競技以外のことにも目を向けるのか。その背景には、「ヒーローになる」という彼独自のビジョンがある。長友が目指すのは、サッカー選手として輝き続けることではなく、「世界中の人を救うヒーローになる」ことだという。

“サッカー一色”だった彼の思考に変化が訪れたのは、日本代表に選出されてからのこと。それまで自分を向いていた“人生のベクトル”が、世界を向くようになったと言う。

「サッカーを始めた小学生の頃から今日まで、『もっと上手くなりたい』という想いは変わりません。夢だった日本代表にも選出され、自分への期待感が湧くようになりました。その期待感とともに日本代表としてプレーをするようになってから、その感覚が少しずつ“日本代表としての使命感”に変わっていきました。そんな日本代表の使命感を背負ったとき、サッカー以外にも『もっと、できることがあるはずだ』と思えてきたのです」

サッカーがうまくなりたいという過去の自分から、次に歩むべき未来の自分が明確に見えたようだ。長友はこう言う。

「サッカー選手でいられる期間は限られている。つまり、サッカー以外の道でも自分を磨き続けていかなければいけません。起業家になったのも、投資家になったのも、すべては『世界中の人々を助けられるヒーローになる』というビジョンから逆算した結果です」

世界を動かす、その志に投資する


長友は現在、「多くの人に毎日健康的で充実した生活を持続する機会を提供する」ことを目的とした事業会社Cuoreと、「世界に通用する選手を輩出する」というビジョンを掲げたサッカースクールINSIEMEを経営している。

多忙なスケジュールのなか、アスリートと起業家という二足の草鞋を履き、そして2019年には、さらに投資家としてのキャリアを歩む決意をした。その意思決定の裏には、「アスリートとして培った影響力と、経営を通じて得た起業家としての視点を掛け合わせることで、さらに大きな価値を世の中に提供できる」という彼の確信があるという。

「投資家という職業は、僕がビジネスをするうえで一番の強みとなる『影響力』を生かせる仕事です。投資家にもさまざまなスタイルがありますが、僕は僕にしかない強みを武器にスタートアップの躍進を後押ししていくつもりです」
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文=倉益りこ & 小原光史 写真=伊藤圭

この記事は 「Forbes JAPAN 4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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