滋賀県警は、いったんは引き下がり、京都大に依頼していた人工呼吸器の鑑定を待つことになった。
病院側は、あくまで「アラームは鳴らなかった」とみており、その理由として、人工呼吸器に何らかの不具合が生じた可能性を見ていたからだ。取材班が情報公開請求で入手した、病院から県への「医療事故報告書」には、事故原因の分析として、こう記されていた。
「現状では、呼吸器の接続が外れて心肺停止になった可能性を最も考えるが、司法解剖、呼吸器の点検の結果報告を待ちたい」
人工呼吸器+モニターによる二重チェックを
報告書の中で注目すべき点は、事故を踏まえた今後の事故防止対策として、こう指摘されていることだ。
「呼吸器のアラームが鳴っていなかったのが、機械の故障なのかどうかは判断できないが、このような患者には酸素飽和度モニターなどの装着をして、二重のチェック機能を設ける必要があると考える」
病院内で医療事故が起きれば、警察の捜査が介入することは避けられない。だが、極めて専門的な分野にもかかわらず、捜査にあたる捜査員が医療知識に精通しているかというと、そうではない。それどころか、現場の捜査員が勝手な筋書きを描き、思い込みで突っ走ることが現実に起きることを、この事件は教えている。
だとすれば、医療機関がしておくべきことは、患者に起きたことを可能な限りデータとして記録しておくことしかない。酸素飽和度モニターか心電図モニターが装着されていれば、死亡時刻、容体の変化が克明に記録されていたはずだ。そうであれば、「看護助手による計画的密室殺人」などという荒唐無稽なストーリーを捜査機関にでっち上げられることはならなかったはずだ。
実は、湖東記念病院では事件前、看護助手たちがモニターの装着がないことに不安を覚え、病院側に訴えていた。
西山さんが、両親に送った手紙とは別に、獄中で書き続けたノートにその経緯が記されている。
西山美香さんの「獄中ノート」。後悔や悲痛な思いが綴られている