全国6000名の定量調査が物語る、コロナ禍での生活者の不安

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ニッセイ基礎研究所では、3月1日からの全国一斉休校という政府要請の直後、全国の20~50歳代の男女、約6000名に対して「暮らしに関する調査」を実施した。本稿では、そこで見えた新型コロナウイルスへの不安が強い生活者の特徴を捉える。


新型コロナへの不安


1|性年代別


「新型コロナウィルス関連肺炎に対して、どの程度不安に感じるか」についてたずねたところ、全体では「非常に不安」(38.6%)と「やや不安」(35.1%)をあわせた不安層が73.7%であった。[下:図表1]

性年齢別に見たコロナへの不安

不安層は年齢とともに増え、いずれの年代でも女性が男性を上回り、今回の調査では最も年齢階級の高い50歳代の女性では82.2%であった。これは、女性の方が男性より、休校や日用品の買い出しをはじめ、新型コロナによる暮らしの混乱の影響を受けやすいことに加えて、不安を感じやすいという性差の影響もあるのだろう。

2|職業別


職業別に見ると、男性では不安層は「公務員( 管理職以上)」(75.3%)で最も多く、次いで僅差で「正社員・正職員(管理職以上)」(72.4%)、「公務員(一般)」(72.2%)、「正社員・正職員( 一般)」(69.4%)、「経営者・役員」(68.4%)と続く。

男性では、出社制限やテレワークへの切り替え指示といった現場のマネジメントを担う管理職層では、負担感が強いために不安が強い様子がうかがえる。

一方、女性では不安層は「専業主婦」(84.8%)で最も多く、次いで僅差で「自営業・自由業」(81.0%)、「嘱託・派遣社員・契約社員」(79.6%)、「パート・アルバイト」(78.1%)、「正社員・正職員(一般)」(74.3%)と続く。

女性では、子の休校による負担が大きな層ほど不安が強い様子がうかがえる。負担には家庭で子の世話をすることのほか、就業者ではフリーランスや非正規雇用者などの不安定な立場で働く者は、休業が収入減少に直結するという金銭面の問題もある。

3|家族の状況別


家族の状況別に見ると、未婚者より既婚者(配偶者あり)で、子がいないよりいる方が、単身世帯より同居家族の人数が多い方が不安層は多い。家族の人数が多いと自分だけでなく家族の心配がある上、自宅での罹患リスクが高まる懸念があるのだろう。

なお、男性と比べて休校の影響を受けやすい女性について、就業状態別・子の有無別に見ると、就業者では子の有無によらず、自営業・自由業>非正規雇用者>正規雇用者の順に不安層が多いが、いずれも子のいる女性が子のいない女性を上回る。[下:図表2] また、子のいる女性では、自営業・自由業の不安層は専業主婦を上回る。

就業別と子の有無別の女性の不安層

4|日頃の行動・価値観別


このほか、新型コロナに関係がありそうな日頃の行動や価値観別に見ると、「情報は自分で検索して手に入れたい」や「情報取得に時間をかけている」などの情報収集に積極的な層のほか、「SNSを使う人は多いが、結局、マスメディアの影響が最も大きいと思う」というマスメディア志向の強い層で不安層が多い傾向がある。

これらより、増え行く感染者数や食料・日用品の買い占め騒動といった不安を増すような情報に対して、他者と比べて多く接することで、自ら不安を高めている様子がうかがえる。
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文=久我尚子(ニッセイ基礎研究所 主任研究員)

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