全国6000名の定量調査が物語る、コロナ禍での生活者の不安

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新型コロナによる外出抑制


「新型コロナの発生によって外出を控えるようになったか(通勤・通学を除く)」についてたずねると、全体では「控えるようになった」(30.0%)と「やや控えるようになった」(33.9%)をあわせた外出抑制層は63.9%であった。

新型コロナへの不安別に見ると、外出抑制層は、「非常に不安」と「やや不安」をあわせた不安層では74.9%、「全く不安でない」と「あまり不安でない」をあわせた非不安層では20.9%であった。

なお、外出抑制層は不安層が多い属性とおおむね合致しており、男性より女性で、年齢は高いほど、未婚者より既婚者で、子がいないよりいる方が、男性は管理職層で、女性は専業主婦のほか、自営業・自由業>非正規雇用者>正規雇用者の順に多い。

地域別には、当調査の実施直前に、知事から外出自粛要請が出た北海道で、最も不安層が多く、外出抑制層も多い。

外出抑制で増えた行動


「外出を控えて、どのような行動が増えたか(複数選択)」についてたずねると、全体では「テレビの視聴」(51.4%)が最も多く、次いで「ネットサーフィン」(43.8%)、「動画配信サービスの視聴」(27.5%)、「睡眠」(22.6%)、「インターネットショッピング」(20.9%)と続く。また、「その他」の自由記述では、「ゲーム」が比較的多いほか、「裁縫」や「除菌」といった項目もあがっている。

外出抑制で増えた行動について、不安層・非不安層別に見ると、不安層ではいずれの項目も選択割合が高い傾向があるが、特に「テレビの視聴」( 非不安層より+18.8%pt)や「ネットサーフィン」( +13.9%pt)、「インターネットショッピング」(+10.8%pt)で非不安層との差がひらく。[下:図表3]

外出抑制で増えた行動

つまり、不安が強く外出を控えている者ほど、家でテレビを見たり、ネットで情報収集をしている。日頃から情報収集に積極的な層やマスメディア志向の強い層で不安層が多いことを踏まえると、外出を抑制している者ほど、テレビやネット検索によって新型コロナの情報に多く触れており、負のスパイラルに陥っているようだ。

つまり、マスメディア志向や情報収集志向が高い者ほど不安が強く、不安が強いために外出を抑制し、自宅でテレビ視聴やネット検索をすることで新型コロナ関連の情報に接触することで、ますます不安を強めている。[下:図表4]

不安とメディア接触との関係図

このほか、外出抑制で増えた行動については、20~30歳代で「動画配信サービスの視聴」や「SNSの投稿や閲覧」、「メールやLINEによるコミュニケーション」が、30~40歳代の男性で「ネットサーフィン」が、30~40歳代の女性で「掃除」や「料理」が多い。

おわりに


新型コロナの終息が見えずに、誰しもが不安を抱えている。世界各国で爆発的に感染が拡大する中で、不安を感じるのは自然なことだ。一方で、当調査の結果から、生活者自らが不安のスパイラルに陥っている様子も見えた。

未知の感染症との闘いにおいては、まだ不確かな情報も少なくない。このような中では、時には、ある程度、意識的に情報を遮断する時間を作ることも必要ではないか。

さらに、終息には数年を要するという見方もある。今、個人ができることは、自分の生活をしっかりと守ることだ。政府の経済支援策を十分に活用する一方で、不安感を不要に高めるような情報を自ら探しにいくのではなく、日々の健康管理など、すべきことをしっかりとやっていくことが精神の健康にもつながるだろう。

また、情報を出すメディア側には、感染者だけでなく退院者の状況など俯瞰した情報提供を求めたい。負の情報だけでなく、正の情報もあわせて見ることで、生活者は現状をより冷静に捉えられるのではないか。(さらにデータを示した本稿の詳細版はこちら

(この記事はニッセイ基礎研究所レポート・2020年5月12日からの転載です)

文=久我尚子(ニッセイ基礎研究所 主任研究員)

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