特許関連の情報サイトPatently Appleは5月4日、アップルが提出したバイノーラル録音技術に関する特許出願書類を掲載した。そこに描かれたテクノロジーは、ユーザーに音楽が演奏される現場に居合わせたかのようなエクスペリエンスを提供するものだ。
「資料に記載されたバイノーラル録音技術は、フル3Dのサウンドを実現するものだ。アップルはHRTFと呼ばれる音声の空間レンダリング処理技術を用い、音の方向を認識可能にする」と、Patently Appleは解説している。
バイノーラル録音は古くからある技術で、従来は頭蓋骨をかたどった模型の耳の位置に左右のマイクを設置し、臨場感のあるサウンドを録音していた。このレコーディング技術は、ビジュアルとの組み合わせでさらに威力を発揮する。ユーチューブ上には、バイノーラル録音で収録されたサウンドも公開されている。
ただし、アップルはiPhoneに擬似的な2つの耳を加えるのではなく、ソフトウェア上の処理でバイノーラル録音を実現しようとしている。今回の特許では、デュアルカメラシステムと4つの内蔵マイクによって空間を認識し、ソフトウェア処理でバイノーラル音声を構築するプロセスが解説されている。
AR(拡張現実)技術はスマホを用いた新たなエクスペリエンスを可能にし、ヘッドセットを用いた場合などに臨場感あふれる視覚効果を実現した。ここにバイノーラル録音が加わることで、臨場感はさらに高まることになる。iPhoneはこのイノベーションを実現する上で、理想的なツールとなる。
特許を申請したことで、必ずしもその技術が実用化されるとは限らないが、アップルがAR分野での新たなイノベーションを探っていることは明らかだ。筆者としては、近い将来、アップルのバイノーラル録音が現実のものになると予想している。