アメリカの企業では、人材育成、指導方法としてメンターシップが定着している。とはいえ、男女間ではいまだ顕著な差異が存在する。女性社員をメンターとするケースは、男性に比べてはるかに少ないのだ。女性メンターは男女平等の観点からだけでなく、職場の人間関係や企業文化の向上にも有効だ。主な理由は4つある。
1. 職場の問題を語りやすくなる
女性はよく、男性はベテラン女性社員をメンターにしたがらないと決めてかかる。この思い込みは、人との関係構築において致命傷となる。特定の社員に対する先入観を捨てさえすれば、皆が心を開きやすい環境を醸成できる。職場の問題について語りやすくなり、例えばセクハラやパワハラに対する各自の経験や見識、またその欠如も見えてくる。
よきメンターは説教をするのではなく、会話を生み出す。オープンな対話を生み出すためには、会話が積極的に交わされる空間を作らなければならない。メンターから指導や助言を受ける側のメンティーが、悩みを抱えているときに、すぐに気づいてあげられるからだ。メンティー側も安心してSOSを出せる。
2. 女性にはロールモデルが必要だ
現状を変えたいときは、メンターが会話の主導権を握るとよい。効果的なリーダーシップの大部分は、メンター自身の物語と、自身の成功・失敗を通じて部下を教育し、経験によって示される期待値を設定することにある。とりわけ女性社員に対しては、女性メンターがロールモデルになることが有効だ。模範となって率いることで、チームの社交的・心理的な側面を最大限に生かすことができる。
3. 男女ともにメリットがある
職場にジェンダーニュートラルの意識を浸透させたいなら、男性と女性を平等にメンターとしなければならない。さらに言えば、女性が男性のメンター役をもっと務めるべきだ。 女性が提供できる経験や知恵は、男女を問わずあらゆる人に力を与えるのだから。
女性がメンターとして男性社員につくと、将来をより楽観視できるようになるという報告もある。
一方で、意識の高い知的な男性の多くは、女性の同僚からもっと学び、彼女たちをもっと理解する方法を知りたいと思っている。ただ、その手段を知らないことが多い。そのため、自分たち男性の世界という境界の外に足を踏み出した途端、困り果ててしまうのだ。彼らには、正しい方向に導いてくれる経験豊富な女性のメンターが必要だ。
4. メンターの能力に肩書は関係ない
女性管理職の比率が低いことは、女性メンターが少ないことの理由にはならない。メンターの役割を担うのに、要職に就いている必要はない。新入社員であっても、転職間もない社員でも構わない。誰もが、自分が置かれた環境に変革の火を起こすことはできる。一人ひとりが、自社の企業文化を支える基盤作りに重要な役割を担っているのだから。