まさに「一夜城」大量検査施設を14日で設立、UAEの王族率いるコロナ対策

Photo by Francois Nel/Getty Images

1月末、アラブ首長国連邦(UAE)は、国内初の新型コロナウイルス感染者が判明したと発表した。湾岸諸国内で初めての感染者報告で、同地域において口火を切った形だった。

2月末から、近隣の湾岸諸国で感染者が確認され、外出禁止や空港閉鎖などの対策が相次いで打ち出されたが、UAEの目に見える動き出しは遅かった。状況が一変したのは、3月中旬。UAEの感染者数は、日々1桁ほどで推移していたところ、急に1日で40人を超えるようになり、4月に入ると、感染者数が1日100人を突破。最近では400-500人ほどの感染者が発表されるようになった。

UAEの1日当たりの感染者数が急増したのは、3月後半に大規模検査を開始したことが主な原因だ。人口約960万人のUAEは、4月25日時点で検査件数が100万を突破。人口に対する検査比率は、アイスランドに次ぎ、世界で2番目だ。

ドイツのリサーチ会社statistaによると、UAEの100万人あたりの新型コロナウイルスによる死者数は4.78で、137.55のアメリカや、61.33のドイツといった、欧米諸国と比べてかなり少ない。ただし、UAEは他の湾岸諸国と比べると、飛びぬけて死亡率が低いわけでもなく、近隣のカタール、サウジより少し高く、バーレーンより低いくらいだ。ちなみに、日本は2.22、韓国は4.61だ。


ドイツのリサーチ会社、statistaのHPより

新型コロナウイルスの流行はいまも進行形なので、大規模検査の実施が正解なのか否か、筆者にはわからないが、UAEのスピード感を持った対策には目を見張るものがある。どうやってUAEは短期間で大規模検査の実施体制を整え、重症者や死者数を減らそうとしているのか。アブダビに住む筆者の視点で、UAEの新型コロナ対策を紹介したい。

なぜ大規模検査に踏み切ったのか


UAEは、7つの首長国で構成された連邦で、各首長国が政府を持つ。連邦の首都アブダビは、国内石油埋蔵量の9割以上を有し、連邦の財政はほぼアブダビ首長国に依存している。


UAEの地図(日本アラブ首長国連邦協会HPより)

UAEは1971年に建国した新しい国だ。2月に入り、ムハンマド・アブダビ皇太子は中国・韓国含む世界中の首脳と電話で情報の交換や協力、相互支援などについて意見交換している。国として、感染症対策の経験が乏しいなかで、さまざまな国の情報を収集、分析、アドバイスを参考にしたようだ。

政府に近い地元の新聞は、「当初、中国の次に感染者数が多かったのに、有効に大量検査をすることで拡大を食い止めた」として韓国を取り上げ、「検査は患者の早期発見、悪化を防ぐための適切な処置ができる」と報じている。

3月初旬には、ムハンマド皇太子は文大統領と電話で会談。その後4月初旬、ムハンマド皇太子弟アブダッラー外務・国際協力相が韓国外相に対して、新型コロナウイルスに関する協力に対し礼を述べたことが報じられている。

感染者を早期に発見し、症状のレベル別に治療場所を適切に振り分け、重症化する人の数を最低限にする。そのために、大規模検査が有効だと考えたUAEの政府指導部は、感染者早期発見のために出来るだけ多く検査をするよう関連部署に指示した。

この方針のもと、指示を受けた関係各所は急ピッチで検査体制を整え、国内で1日数千から数万件の検査を実施するようになった。
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文=本田 圭

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