まさに「一夜城」大量検査施設を14日で設立、UAEの王族率いるコロナ対策

Photo by Francois Nel/Getty Images


14日で大規模PCR検査研究所を設立


検体を採取しても、実際に検査をできる施設がないと、意味がない。そのため、3月31日に開所が発表されたのが大規模なPCR検査研究所だ。設立まで14日。まさに「一夜城」である。

UAE政府支援を受けて、中華系CEOが率いるアブダビ拠点のAI・クラウドコンピューティング企業「Group42」と、中国広東省に本社を置くゲノミクス企業「BGI」が立ち上げた。採取した検体をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけ、反応によって陽性陰性を判断するのだが、一日数万件の検査を可能にするこの規模の研究所は、中国外ではここだけだそうだ。

UAEの人口の9割を占める外国人への感染拡大防止施策も重要な鍵となる。

国内の外国人の多くは、東南アジア、南アジアからの出稼ぎ労働者たちで、一つの部屋に数人で住むなど密集した生活を送っている。彼らが暮らす地区の感染拡大防止対策は重要で、政府は、先日、アブダビの労働者密集地区に医療クリニックを設立し、不法就労者も含め、症状のある人には無料で検査するサービスを開始した。

また、エミレーツ航空はドバイ政府と協力の下で開始した搭乗前抗体検査を始めた。航空会社が搭乗予定の乗客に検査を行うのは、世界初となる。

UAEは、3月後半に航空機運航、国内空港への受け入れを停止した。一方、海外にいるUAEへの帰国を呼びかけ、帰還便を手配、またUAE内の外国人を自国に帰還させるための特別機の手配にも協力している。

この特別機の運航のうち、4月15日にチュニジア行きのフライトの乗客全員が出国前に検査を受けたと報道があった。ドバイ保健庁から派遣された職員が、乗客の血液を採取する様子が写真に写っている。感染者の体内にできた抗体の存在を確認するための抗体検査だと見られるが、検査の精度は不明で、どこまで有効かは分からない。

UAEは外国人の帰還を進めようとしているが、帰還者を受け入れる国の側は、態勢が整っていないとして、受け入れに協力的でないケースもあるという。結局、資金も潤沢で設備も整うUAE側で検査をし、相手国が「安心して」自国民を受け入れられように希望者の帰還実現に向け、事を進めているようだ。
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文=本田 圭

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