アンバニは石油及び通信業界で幅広く事業を運営しており、ジオ・プラットフォームズの親会社のリライアンス・インダストリーズ(RIL)のCEOを務めている。
インドには現地語で「キラナ」と呼ばれる小規模な小売店があるが、フェイスブックとジオは6000万店に及ぶキラナの店主らをジオのEコマースプラットフォームに呼び込み、ワッツアップでつなごうとしている。
今回の買収はフェイスブックにとって、2014年にワッツアップを220億ドルで買収して以降で最大の出資案件となった。ワッツアップは世界20億人のユーザーを抱えているが、そのうち4億人がインド人ユーザーだ。
ただし、フェイスブックとジオの両社はインドで巨大なユーザーベースを抱えつつも、逆風に直面してきた。
フェイスブックはワッツアップで拡散するフェイクニュースに関し、インド政府から厳しく追求され、モバイル決済の導入を延期させられた。一方で、ジオの親会社のRILは400億ドルの債務を抱えており、アンバニの石油ビジネスも世界規模で進む原油価格の下落に襲われている。
今回のフェイスブックの動きは、インド市場を狙うシリコンバレー企業の最新の事例と言える。アマゾンは今年1月にインドの中小企業支援に向け10億ドルを出資すると宣言したが、これは現地のEコマース企業Flipkartを買収したウォルマートに対抗する動きとみられている。
一方で、グーグルはモバイル決済のGoogle Payで、現地のPaytmと市場を争う構えだ。
リライアンス・インダストリーズのアンバニは声明で、ジオが運営するEコマースの「ジオマート」とワッツアップは3000万店近くの商店のデジタル化を支援していくと述べた。
ムケシュ・アンバニが築いた富の背景には、家族の確執の物語がある。ムケシュは弟のアニルと父の財閥の支配権や相続権をめぐって争った後、リライアンスの通信事業を弟に奪われた。そして、2016年にムケシュは自身の通信会社であるジオを設立した。
ジオは競合らに価格戦争をしかけ、3億8800万人の利用者を獲得した。そして、通信速度が速く、安価なモバイルネットワークを提供するようになった。その結果、苦境に追い込まれたアニルは、2018年にリライアンスの通信事業を兄のムケシュに売却した。
フェイスブックは今回の取引で、ジオの企業価値を660億ドルと評価した。フォーブスはムケシュ・アンバニの保有資産を486億ドルと試算している。