変革の時代にある医療現場の実情、医師たちの本音を現役フリーランス麻酔科医が明かす、『フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方』(筒井冨美著、光文社新書)より引用して紹介します。
大学病院で教授のポストを得られるのは、医大卒後21~30年目頃になる。大学病院からの本給は年800~1200万円程度で、教授の肩書きを利用したアルバイトによって、事実上の年収が決まる。
高額アルバイトを多数こなすことも
例えば、天皇陛下のバイパス手術執刀医としても知られる順天堂大の天野篤先生は、2016年のアエラムック「医学部がわかる」のインタビューで、「(大学病院と他病院を合計した)年間所得は5000万円以上」と答えている。
教授ともなると、部下を伴うようになるなどアルバイトにも幅が出る。また教授という肩書きを求めた一般病院の外来を担当することもできる。
手術や血管内カテーテル治療のように、外部市場で切り売りできる確かなスキルのある教授は、高額アルバイトを多数こなして報酬を得ることは簡単である。
「腹腔鏡の魔術師」と呼ばれた『ドクターX』の加地秀樹准教授のように「デモンストレーション手術」と称する外部病院への出張アルバイトで、得意な手術をバンバンこなせば1日15万~50万円(天野教授クラスは更に高額)は得られるだろう。
教授回診は「1回5万~10万円」?
政治力で教授になった「医師としての腕は平均以下」タイプの医師でも、教授ブランドをうまく使えば高額アルバイトが可能である。都市部のセレブ向け病院では、教授ブランドに対して色を付けたアルバイト料(半日10万円など)を支払ってくれるようである。
また、「特別診察」と称して入院中のVIP患者に対して教授回診を行い、プレミアム感を演出することで「回診1回5万~10万円」の報酬を得ることもあるらしい。
医大教授の中には「研修医をたっぷり働かせて、自分は指導と称してチョロッと顔だけ出して、2人分の報酬ゲット」という形のアルバイトを行う医師がいる。「毎週木曜日の出張麻酔2人で月額80万円」の約束だったが、自分は「学会出張」などと言ってサボりまくって、「実質4時間労働で、月40万円ゲット」するような教授である。
このほか、若手医師が医学博士号を取得する際、教授に「研究費」などの名目で20万~50万円程度を包んで手渡したり、医師派遣の謝礼、仲人のお礼、製薬会社からの講演料・原稿料などなど、さまざまな収入源がある。
とはいえ、大学医局の衰退や教授ブランドの低下に伴い、残念ながらこのようなおいしい教授アルバイトは減少する一方である。もはや医大教授でも大儲けできた時代は終わったといっていいかもしれない。