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2020.04.22 09:00

「三方よし」の関係性を築けるか BtoBtoCの基本概念と成功事例を解説

Artur Szczybylo/Shutterstock.com

BtoBは企業間取引、BtoCは企業と消費者による取引に対し、商習慣や取引の複雑化から使われるようになった「BtoBtoC」という言葉。

「良いモノを作れば売れる」という時代は終わり、いかに多様化した消費者のニーズに合う物を適切なチャネルで販売するかが重要になっている。

ここではBtoBtoCの基本概念や成功事例について解説する。

BtoBtoCとは


「BtoBtoC」(B2B2Cとも表記)とは「Business to Business to Consumer」の略で、企業と消費者の間で取引のサポートを行う企業や、販売促進のためのマーケティング戦略といった企業活動を指す。

企業が扱う商品をエンドユーザーとなる消費者へ届ける流通業や、メーカーの商品を販売店や小売店に卸す問屋業は、古くから存在するBtoBtoCだ。

一方、インターネットが誕生したことで生まれたECのマーケットプレイスモデルもまた、BtoBtoCの代表例だ。

インターネットは、ECのみならず検索エンジンやSNSなど、現代では欠かせない様々なサービスを生み出した。その根底にあるのが「プラットフォーム」という考え方だ。

BtoBtoCはまさに、このプラットフォームという概念が浸透するにつれ、使い始められた言葉である。

アリババやAmazon、楽天市場、ZOZOTOWNに代表されるマーケットプレイス(モール)型のECサイトは、「インターネット上の商店街」とも言われ、「EC市場におけるプラットフォーマー」として年々成長し続けている。

企業が扱う商品をこれらECサイトに出店することで、販売チャネルを拡大できる。BtoCビジネスを行う企業に対して、ECモールという形での出店をサポートし、販売促進に繋げてもらうのが、BtoBtoCを体現するマーケットプレイス型のECサイトだ。

あらゆる業界において、顧客視点から考えるマーケティングやサービス設計が求められ、BtoBやBtoCでは「Win-Win」が大事だと言われるが、BtoBtoCでは「Win-Win-Win」(三方よし)の関係性を築けるかが鍵となってくる。


BtoBtoCビジネスの成功事例について


ここではBtoBtoCの成功企業や事例について紹介する。

楽天市場(楽天)


BtoBtoCを牽引するサービスであり、国内EC最大手である「楽天市場」。楽天市場における国内EC流通総額は昨年末時点で、約3.9兆円に上り、事業者は約5万店舗を数える。

ネットショップ開業にあたり、専任のECコンサルタントのサポートや楽天市場の持つ集客力は、事業者の成長を支えるキーファクターだ。

ECモールの出店を行う企業に対し、ECコンサルタントが成功事例から得たナレッジを共有することで、消費者のニーズに応える商品開発や販売活動を行える。

消費者にとっても、ファッションや生活雑貨、家電、グルメ、車など幅広い商品が揃っているため、店に行かずともネットショッピングで購買体験ができる。

まさに、三方よしを体現する仕組みがあるからこそ、ここまでの成長を遂げたのだろう。

中国EC大手「アリババ」や米国GAFAの一角を担う「アマゾン」も、マーケットプレイス型ECから事業を始め、世界的企業へと成長した。

BtoBtoCのビジネスモデルの成功例として、マーケットプレイス型ECは外せない。

LIMEX(TBM)


「LIMEX(ライメックス)」は、「TBM」が開発した日本発の新素材。世界各地の埋蔵量が豊富な石灰石を主な原料としているため、環境課題の解決が期待されることから、注目を集めている。

プラスチックや紙の代替となるサステナブルな素材を開発したことが、急成長の大きな要因となっている。

2014年に国内特許を取得以降、世界40カ国以上で出願し、中国や欧米諸国を含む30カ国以上で特許登録するまでに広がっている。現在、ライメックスを開発するTBMの時価総額は1200億円を超え、ユニコーン企業の仲間入りを果たしている。

TBMは、素材メーカーという立場で、名刺やPOP、ポスターなどの販促物を製品化し、企業へ販売している。

一方で、ライメックスを導入すれば、脱プラスチックやペーパーレスを目指す企業ニーズや、サステナブルな商品開発を行うことによる企業ブランディング向上に繋がる。

さらには、昨今の環境汚染が問題視される中、消費者にとっても環境に優しい商品を選ベるため、ライメックスを使用したショッピングバッグやアパレル商品は、BtoBtoCで考えた時に企業・消費者問わずメリットを享受できる。

キシリトールガム


今ではごく当たり前にキシリトール入りのガム。「ロッテ」、「明治」、「グリコ」といったメーカーから販売されている。

かつてブームを創り、キシリトールを根付かせた緻密なマーケティング戦略あったからこそ、現在まで廃れることなく、キシリトールが存在しているのだ。

ブームを仕掛けたのは、フィンランドで主流のキシリトールを、日本に初めて上陸させた藤田康人(インテグレート代表取締役)。

キシリトールは1997年、食品添加物として国に認可された甘味料。しかし、当初は知名度が低く、どうキシリトールを広めるかが課題となっていた。

そこで、虫歯予防に力を入れている歯科医に着目し、歯科医院専売品としてキシリトール入りのガムを、予防型の歯科医院(むし歯や歯周病予防のための定期検診を推奨する歯科)に置いてもらう施策を行った。

「虫歯予防にはキシリトール」「歯科医推奨」というPRをもとに、虫歯治療から虫歯予防という歯科医の新たなビジネスモデル構築に一役買ったキシリトールは、認知度が格段に増え、2000億円市場まで成長するに至ったのだ。

キシリトールを単に商品化し、小売を行うだけではここまでの知名度は得られなかっただろう。

食品素材メーカーの立場から、歯科医と患者にどのようにアプローチすれば、三方よしの関係性が築けるか。

企業のみならず、エンドユーザーである消費者まで視野に入れてマーケティングを行うことで、ステークホルダーとなる企業を巧く巻き込み、市場を創るためにBtoBtoCを実践した好例と言えるだろう。

文=古田島 大介

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