欧州で最も利用者が多い空港であるヒースロー空港の最高経営責任者(CEO)、ジョン・ホランド=ケイは、英紙タイムズのインタビューで、体温を感知するサーモグラフィーカメラは、2001年の米同時多発テロを受けて強化された保安対策や、液体や電子機器に対して行われているチェックのように、今後、空の旅にはつきものになる可能性があるとの見方を示した。
また、英国外の空港にはサーモグラフィーカメラが設置されているのに、英国の空港には見当たらないことに人々が疑問をもつのは「完全に理解できる」とも表明。人々は「イングランド公衆衛生局が行っている検査よりも高いレベルの検査」が必要だと思っているとも語っている。
ただ、空港でのサーモグラフィーカメラについては、有効性を示す根拠が乏しいのが実情だ。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)の推定では、新型コロナウイルスの感染者のうち、空港で見つかった人は5人に1人にすぎない。
イングランド公衆衛生局はこれまでに、イタリアなどが始めた空港での体温検査は導入しない方針を明らかにしている。
一方、中国では新型コロナウイルスの封じ込めや「第2波」の感染予防のため、サーモグラフィーカメラは空港だけでなく、バスなどの公共交通機関や駅、ショッピングモール、飲食店などにも設置されるようになっている。
サーモグラフィーカメラを用いた体温測定は、02〜03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行を機にアジア各地の空港で相次いで導入された。ただ、今回の新型コロナウイルスは世界保健機関(WHO)によると潜伏期が平均5日程度とされるほか、無症状の感染者も多くいて、カメラでは検知できない点が問題となっている。