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2020.04.15

見込み客から発見してもらう「インバウンドマーケティング」 成功事例、最新ツールを解説

skaman306/Getty Images

電話セールスや足で訪問する営業手法(アウトバウンドマーケティング)に対し、企業のオウンドメディアやSNSなどからのコンテンツ発信を行い、見込み顧客から問い合わせを得る手法が「インバウンドマーケティング」だ。

プッシュ型でなくプル型であることが特徴となるインバウンドマーケティングの基本的概念や成功事例、ツールについて解説する。

インバウンドマーケティングとは


「インバウンドマーケティング」とは、WEBサイト、ブログ、SNSなどでのコンテンツ発信を通して、見込み顧客から発見してもらうマーケティング手法。電話営業やDM、マス広告などの「アウトバウンドマーケティング」と対をなす手法であり、一度仕組みを整えれば、継続的な見込み顧客の自然流入が見込める。

インバウンドマーケティングは、インターネットが普及し、Webマーケティングが主流になるにつれて使われるようになった言葉だ。

2009年、「ハブスポット」CEOのブライアン・ハリガン著書『INBOUND MARKETING』の出版を機に、インバウンドマーケティングが注目され、見込み顧客に求める情報やニーズに応えるコンテンツ配信の重要性が問われるようになった。

現在では、インバウンドマーケティングを実現するための様々なマーケティングツールが存在し、広告やDM、テレセールスに頼らない顧客視点に立ったマーケティング活動にシフトしている。

スマートフォンでの情報収集が容易になり、消費者が求めるものも多様化した時代だからこそ、顧客の意図しない購入を喚起するような営業方法は嫌われてしまう。

潜在顧客のニーズを見極め、どのようなコンテンツを配信すれば興味関心を惹いてくれるのか。インバウンドマーケティングを成功させるには、適切なターゲット選定を行い、継続的にコンテンツを配信していくことが大事になる。

次に、具体的な成功事例とツールを紹介する。

インバウンドマーケティングによる成功事例と最新ツール


We Love Social(コムニコ)


「We Love Social」はSNSマーケティングを支援する「コムニコ」のオウンドメディア。後述するインバウンドマーケティングのツール「HubSpot」を導入し、早くからインバウンドマーケティングによって成果を上げている企業だ。

電話営業やフィールドセールスによる新規顧客獲得の効率の悪さを感じていた同社は、セミナー内容や自社の持つナレッジをeBookやブログコンテンツに集約。HubSpotを活用して、見込み顧客に対しコンテンツを閲覧してもらうよう導線設計をした。

見込み顧客のライフサイクルステージ(購買の興味の度合い)に応じたアプローチを続けた結果、オンラインによる申込件数が導入前と比べて10倍になったという。

見込み顧客を獲得するために、SNS運用担当者のヒントになるような有益な情報配信を継続したことで、成果に繋がった例と言えるだろう。

キリンレシピノート(キリン)


「キリンレシピノート」は、国内大手飲料メーカー「キリン」が運営するオウンドメディア。

競争の激しい飲料メーカーは、TVCMやPOPなどによる店頭販売促進を行い、購買喚起を行うことが一般的。他方、マーケティングチャネルの1つとしてキリンが取り組むキリンレシピノートは、同社が扱う飲料製品に合うレシピを紹介する内容となっている。

「カンタン・おいしい・楽しい」をテーマにしており、おかずやおつまみ、デザートなどバラエティに富んだレシピが特徴的で、レシピ1つ1つに、料理に合う飲み物が紹介されている。

また、ビール類やワイン、チューハイ・カクテルといったRTDなどのアルコール飲料から、お茶、紅茶、炭酸飲料といったノンアルコール飲料まで、飲みものからレシピを探すこともできるようなサイト設計となっている。

自社の商品を宣伝し、購入してもらうような一方通行のコミュニケーションではなく、消費者が求めるニーズや購買シーンを想像し、最適化されたコンテンツ配信を心がけることで、企業のブランド認知度向上やファンの醸成に役立つ。

キリンレシピノートは、単にレシピの提案だけにとどまらず、自社の飲料商品と合うレシピを紹介することで、スーパーやコンビニなどお店で純粋想起(この場合は飲み物を買う際に、キリンの商品を思い浮かべること)される効果を生んでいる。

まさにインバウンドマーケティングで、キリンの飲料製品のファンを増やす施策としての好例だと言える。

HubSpot(ハブスポット)


「ハブスポット」は、インバウンドマーケティングツールを代表するソフトウェアだ。世界120カ国以上、7万3400社を超える企業に導入され、営業活動を支援する機能はもちろん、マーケティングオートメーション(MA)やLP作成など、多岐にわたる統合的なツールとなっている。

「ハブスポット」では、リードスコアリング(見込み顧客の購買意欲を数値化)による見込み顧客の選別を行い、予測に基づいたマーケティング戦略を立案することが可能だ。

施策に応じたレポーティングや分析を通じて、どうリードナーチャリング(購買意欲を高めるために見込み顧客を育成すること)していけば良いか。PDCAサイクルを高速に回す上での有用なツールとして、多くの企業で導入されている。

パスカル(オロパス)


インバウンドマーケティングを実践する上で、オウンドメディアを運営する企業も多いことだろう。その際に必要になってくるのがSEO対策だ。

グーグルのアルゴリズム変動により、SEO対策に対する効果を疑問視する見方もある一方、SEOを意識したコンテンツ制作はWeb上に公開する以上、必ず必要になってくるものだ。

SEO対策ツールは様々存在するが、「パスカル」はコンテンツSEOの分析や調査、具体的な対策を可視化してくれるツールとして国内770社を超える企業から支持されている。

検索ページ上位に来るサイトに共通する特徴を分析し、自社サイトと比較することで、コンテンツをどのように改善すべきかが明確にわかる。

さらに、競合サイトや検索ユーザーの動向を調査する時間は多く要するが、パスカルではこれら競合サイト分析を自動化し、コンテンツ制作の業務効率化を行うことができる。

コンテンツSEOに取り組み上で、分析ツールは欠かせないため、パスカルを活用して効果的なコンテンツ制作をしていくのもよいだろう。

プッシュ型の営業から、プル型の営業スタイルへ。見込み顧客の潜在的ニーズに応えるべく、インバウンドマーケティングに取り組み、新たなマーケティング手法を確立している企業が増えている。

文=古田島 大介

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