テスラはEV(電気自動車)向けのパーツを用いた人工呼吸器のプロトタイプを作成し、4月5日にその動画を公開した。同社はコンプレッサーやポンプなどのユニットの全てを、インハウスで調達している。
「我々は社内で信頼性を確認したパーツのみを用いることで、短期間で需要を満たすボリュームを製造しようとしている」とテスラのエンジニアリング部門のJoseph Mardallは述べた。
動画に収められたプロトタイプには、テスラのモデル3で採用されたタッチスクリーンが搭載され、作動状況を視覚的に表示しようとしている。さらに、リチウムイオン電池やポンプやコンプレッサーもテスラ車のものを用いている。また、酸素混合チャンバーにはサスペンションに用いるエアタンクを使用している。
テスラの人工呼吸器は試作品段階であり、実際に医療現場に投入するためには、FDA(米国食品医薬品局)の承認を受ける必要がある。
メドトロニックは4月4日、スペースXが人工呼吸器の製造において必須となるコンポーネントの製造を進めていると、ツイッターで述べていた。マスクもその前日の3日に、メドトロニック向けにソレノイドバルブの製造を行っていると宣言していた。
自動車業界ではGMやフォードも、医療デバイスメーカーのメドトロニックやVentec、GEヘルスケア、レスメド(ResMed)などが、人工呼吸器の増産を行う上で必須となるパーツの製造を進めようとしている。
レスメドCEOのMick Farrellは4月1日のCNBCのインタビューで、「自動車メーカーから協力が得られるのは非常にありがたい。ただし、彼らには、外部からパーツを調達し、自社で人工呼吸器を開発しないように願いしたい。その代わりに、自動車メーカーらが、当社が必要とするパーツを製造してくれれば、当社は増産体制を整え、新型コロナウイルスとの戦いを進めていく」と述べた。
シカゴのロヨラ大学のエンジニアリング部門教授のGail Bauraによると、人工呼吸器の製造工程は非常に複雑で、FDAの承認を得るためには相当の時間を要するという。
「新規の医療デバイスを現場に投入するためには、FDAが定めた様々な基準に合致する必要がある」とBauraは述べた。
自動車メーカーが開発するパーツが基準を満たし、そこから生み出される人工呼吸器が、実際に医療現場で活用されるまでには、かなり長い時間が必要になりそうだ。