コンラッドは「昨年、インポッシブル・バーガーが最も不足したのは夏だ」と述べた。インポッシブル・フーズの牛肉代替商品の需要が大幅に伸び、同社は注文に追いつけなかった。コンラッドによると、同社は2019年5月から12月までで生産能力を4倍にし、イリノイ州シカゴ郊外を拠点とする大規模食品製造業者OSIグループとの提携を発表した。
肉を食品システムから完全に排除することは過激な考えかもしれないが、コンラッドによると同社の戦略は純粋なイデオロギーというより実務的なものであり続けてきた。バーガーキングのような企業がマヨネーズやチーズなどと一緒に同社の代替肉を使いたい場合でも、「当社はそれほどこだわらない」とコンラッド。
彼女はすぐに「ビーガンやベジタリアンは大事だ」と補足しつつ、「現実として、こうした人に向けて売り込んでいない」と述べた。ビーガンとベジタリアンは、食生活から肉を除くことで既に「正しいことをしている」からだ。肉を食べる人がインポッシブル・フーズの商品を手に取るようにするためには、植物由来のパティをいわば「ビーガンだけの隔離地区」にあえて追いやることはレストランや食料品店にはできない。そのためコンラッドは、同社が柔軟にならなければならないとしている。
テトリックにとって、この柔軟性の達成はもう少し複雑だった。ある日驚いたことに、テトリックは卵業界の元幹部、モーテン・アーンストから連絡を受け、アーンストは同社のサンフランシスコ本社を訪問した。
2人はその後議論を始め、アーンストは業界の変化が見えること、その変化の一部になりたいと思っていることを告げた。その後2人は定期的に議論を始め、テトリックはアーンストの後押しによって、自分がかつて激しく非難していた人たちと最終的に協力することになった。
「こうした企業は数億もの配送ポイントや数千の工場、数万台のトラックを持っている」とテトリック。ジャストだけでこのような設備を見つけたり構築したりできただろうか? もちろんできただろうが、はるかに長い時間がかかっただろう。
インフラとしての潜在性
テトリックは、卵の配給業者を「多くの動物性タンパク質を作り出す存在」と考えるのをやめ、代わりにインフラとしての潜在性を見るようになった。彼はこうした協力関係を活用することで、ジャストが自社だけの場合と比べ半分の時間で拡大できると考えている。
しかし、印象深いのはこうした企業の歴史の長さだった。テトリックはイタリア・ボローニャでの夕食の席で、ある会社の成り立ちについて役員に尋ねた。すると彼は、父親が卵を町中から回収して売ることからビジネスが始まったと述べた。
テトリックは「根本的な関心事は動物を狭いカゴに入れることではない。利益を上げ、今後50年存続する良い企業になることだ」と主張した。これこそ、テトリックが何よりも大事にしたい遺産だ。