アジア中からシェフが集う大規模なイベントはなくなったものの、赤坂のレストラン「クロス東京」では、日本在住の授賞シェフたちにスポットライトをあてるべく、シェフとメディア、関係者など約50人が集まるプライベートビューイングが行われた。
会場に入る前には検温があり、新型コロナ感染のリスクに関する同意書にサインをするという対策がとられた。また、通常はシェフたちが久しぶりの再会の挨拶や、受賞の喜びを分かち合う際に抱き合ったりする姿が見られるが、今年は禁止。いつもとは違う空気が流れていた。
ロンドンからのライブストリーミングの冒頭では、「世界のベストレストラン」コンテンツディレクターのウィリアム・ドリュー氏が「多くの人々が苦しんでいる今、このアワードは『祝う』のではなく、『知ってもらう』ために行うものだ」と言及するなど、新型コロナの影響が日本よりも深刻なヨーロッパの状況を映し出していた。
アジアNo.1には、昨年から2年連続でシンガポールのモダンフランス料理「オデット」が輝いた。
オデットのオーナーシェフ ジュリアン・ロワイエ
日本からは昨年と同じく、50位以内に12店がランクイン。10位以内には、東京の日本料理「傳」が去年と同じ3位、去年5位だったフランス料理「フロリレージュ」が7位、「ナリサワ」が9位、大阪の「ラ・シーム」が10位に。初めてリスト入りしたのは、東京「オード」(35位)、東京「イヌア」(49位)だった(50店の一覧は文末に)。
表彰式中止は翌年に影響か
日本評議委員長の中村孝則氏は、「2月24日に表彰式の中止の連絡があったが、参加者の安全を最大限配慮した形で、シェフたちにスポットを当て、取材の機会を作り露出を高めたかった」と、この1カ月、プライベートビューイング実現のために奔走したという。
こうしたリスト発表に際しては、世界からシェフやメディアが開催地に集い、そこで様々なレストランを訪れることが翌年の投票に影響する。「オデットの快進撃には、去年アジアでNo.1になった約3カ月後に、シンガポールで世界のベストレストラン表彰式が行われたことも寄与している。今回は日本開催ではあったが、海外の投票者の訪日は叶わなかった。これが来年にどう影響するか懸念される」と中村氏は語った。