経済・社会

2020.03.24 07:30

新型コロナウイルスで、最も経済的痛手を受けるのはマイノリティ

Photo by Noam Galai/Getty Images

ほんの6週間前まで、アメリカ経済の情況はとても明るかった。失業率は50年ぶりの低水準に達し、賃金は着実に上昇。中小企業楽観指数は記録的な高さだった。だがそれも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が米国を襲うまでの話だった。

感染が広がりつつある今では、経済を支えるために、連邦準備制度理事会(FRB)がフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%に引き下げる事態になっている。しかし、こうした動きの効果は、低所得者層には均等に行きわたらない。さらに景気後退が続けば、マイノリティは新型コロナウイルスの経済的影響をまともに受けることになるだろう。

知っておくべき分析


新型コロナウイルスの影響によって経済成長が鈍化すれば、収入を失う世帯が出たり、あらゆる規模の企業が痛手を受けたりするおそれがある。これはきわめて現実的なリスクだ。

FF金利が下がっても、リスクは消えない。FF金利は、銀行が、準備金の不足している別の銀行に資金を貸す際の短期金利だ。通常は、この金利が下がると、住宅ローンや、クレジットカードを通じた借金など各種ローンの利率も下がる。だが、それが助けになるのは、そうしたローンやクレジットラインを利用できる人や企業だけだと、「カルチャーバンクス(CultureBanx)」は指摘している。

低金利の資金は、限られた現金とごくわずかな資産しかないマイノリティが簡単に手に入れられるものではない。ピュー・リサーチ・センターによる2016年の調査では、アフリカ系米国人の保有資産の中央値はおよそ1万7100ドルで、白人の10分の1にとどまる。

なお悪いことがある。経済政策研究所(EPI)の調べによれば、あらゆる人種をまたいだ全米レベルで見ても、前回の景気後退では、2009年から2013年までの景気後退後における収入増の85%が、上位1%の層に集中していたという。

景気後退の再来


前回の景気後退では、経済低迷によって失業率が急上昇したが、この際にもマイノリティが最もひどい痛手を受けた。2009年10月までに、アフリカ系米国人の失業率は13.1%に達していた。現在、アフリカ系米国人の失業率は5.5%だが、この数字は上昇する可能性が高い。

アメリカのいくつかの大都市において、新型コロナウイルスの影響で企業が閉鎖されれば、もっとも大きな負担を感じるのは低賃金労働者になるだろう。米労働統計局によれば、在宅勤務が可能な労働者は、全米の労働人口の3分の1にすぎない。

アフリカ系とヒスパニック系の労働者のおよそ8%は、貧困ラインを下回る賃金しか得ていない。それに対して白人労働者では、この割合は4%となっている。さらに気がかりなのは、アフリカ系女性の10%と、ヒスパニック系女性の9%が、ワーキングプアに分類されていることだ。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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