4. 繰り返し試す
前述のような実験の目的は、「正解」を知ることではない。プロトタイピングのプロセスは、コンセプトをよりブラッシュアップし、進化させるためにある。たった1回の実験で完璧なものに辿り着くことはまずないので、何度も繰り返しテストしてみること(イテレーション)が不可欠だ。
現在IDEO Tokyoで進行中のプロジェクトの一つに、Project Bebopというプロボノの取り組みがあり、工業デザイナーを中心とするチームが、脳性麻痺の子どもたちのためのソリューションを開発している。目下取り組んでいるのは、障害児もそうでない子も使える、持ち運び可能なベビーチェアのデザイン。チームは、このプロダクトのユーザーが求める機能性を追求するために、ユーザーテストと試行錯誤を繰り返しながら、たった数週間で100種類ものプロトタイプを製作した。
プロトタイピングにおける3つのポイントは、速く、手軽に、安く、作ること。私たちデザイナーは、仮説を試すためには本当に最低限のものしか作らない。そして、繰り返し、繰り返し、試す。それがある時ユーザーの心の琴線に触れ、「これがあったら今すぐ欲しい」という言葉が聞けるまで。
白紙の状態からアイデアを考え、形にするのは容易ではない。模倣できる競合もいないし、参照できる市場調査も、ベンチマークも存在しない。だからこそIDEOでは、自らをゴールへと導く「情熱」を追求し、進むべき道を辿っているか確かめるために、プロトタイプを作る。
自分が夢中になれることを見つけ、アイデアを形にし、自ら体験し、繰り返しテストすることで、アイデアを実現することへの自信がついていくのだ。