これまでの皮膚疾患診断AIは、限られた疾患や、皮膚の腫瘍の悪性かどうかなど症状の単純な把握を実現するレベルにとどまっており、実際の医療と連携させて使用することが非常に難しかった。
また、例えば、皮膚腫瘍の良性・悪性の区別するように訓練されたAIにアトピー性皮膚炎の写真を分析した際、悪性疾患と誤診するなど、非医療関係者が容易に区別できる疾患であっても診断に失敗するなどの技術的限界があったとされる。
そこで、研究チームはより多くの皮膚疾患を的確に分類・診断できるAIを開発するため、画像認識に優れた性能を発揮する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に、約22万枚のアジア人・西洋人の皮膚疾患の写真データを学習させた。
開発されたAIモデルは、皮膚科の専門医には及ばないものの、レジデント(研修医)と同等レベルに疾患を正確に診断。抗生物質の処方など一次的な治療方法を提示するというタスクまで成功した。
皮膚科レジデント26人、専門医21人が参加した皮膚がんの診断性能テストでは、関係者単独で診断した際の精度が77.4%だったのに対し、AIを援用したケースでは86.8%まで上昇した。また非医療関係者23人が参加した皮膚がんの識別テストでも、47.6%から87.5%に大幅に上昇したことも併せて報告されている。
ナ教授は、AIの精度は写真の焦点・構図などにより影響を受けるが、それらの問題は医師と協業することで補完できると指摘。人間とテクノロジーが手を取り合うことで、より医療が前身すると強調している。今後は、さらなる研究を通じて、スマートフォンやPCで同AIを利用できるようにし、患者の早期来院に役立てたいとしている。
今回の研究結果は、皮膚科学をカバーする医学雑誌「Journal of Investigative Dermatology」の最新号に掲載されており、AI研究者がテストや意見交換を行えるよう一部情報が開示されている。
昨今では美容の領域でも皮膚の健康および美しさを保つAIソリューションが登場し始めている。皮膚の健康から美しさの追求まで、AIはより広い範囲で使われていく気配だ。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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