それまでモロッコへは出かけたことはあったが、サハラ砂漠の向こうのディープなアフリカへ行くのは初めてだった。そして、ベナンでは、僕らが一般的に思い浮かべがちな典型的なアフリカのイメージを良い意味で裏切られ、とても素晴らしい経験をさせてもらった。
理由はいくつもあるのだが、なんといっても、まずは人がいい。僕らをアテンドしてくれたベナンの人たちは、前駐日ベナン大使のゾマホンさんが開校した「たけし日本語学校」で日本語を学んでいる人が多かった。
日本語でコミュニケーションが取れるということで、親近感も一気に湧くのだが、驚くべきは彼らの日本語力である。「日本語が上手い」という表現では失礼なくらい、彼らの日本語は優れているのだ。あれだけ流暢な日本語を操る外国人の集団というのは、世界中を飛び回ってもちょっとやそっとでは探し出すことができないだろう。
ベナン人女性たち
それだけの日本語力をどこで身につけたかというと、それはもちろん「たけし日本語学校」なわけなのだが、ではどうやって身につけたかというと、日本語で書かれた文章を読んだり、ゾマホンさんがベナンに持って帰ってきた日本のテレビ番組を見たりして勉強しているのだという。
それらは古典的な勉強方法かもしれないが、ここまで流暢な日本語を話せるというのは、それだけ彼らが真剣に日本語に取り組み、それと同時に日本に対するリスペクトがあるからに他ならない。そのような思いが随所から伝わってくれば、僕らだってこの国を好きにならないわけにはいかない。
僕らが出会ったベナン人は、総じて丁寧で親切で控えめで、そして熱心で、そんな彼らの姿はとても印象に残った。アフリカの国というと、よく食べ物の心配をされるが、ベナンには地ビールもあるし、ワインだって飲める。それだけあれば僕にとっては十分だ。彼らに会いに、またぜひ訪れてみたいなと思っている。
JICAの協力隊隊員としてベナンへ
その時の滞在で、もう1人、印象に残った人物がいる。その人はベナン人ではない。ベナンでビジネスを展開する日本人女性、川口莉穂さんだ。彼女もまた、ベナンの人たちに魅了された1人だ。
僕らは、経済の中心地であり、この国最大の都市コトヌーのホテルに滞在していたのだが、莉穂さんは彼女が拠点とするアジョウンという田舎町から、ビジネスパートナーのベナン人女性ベルアンジュとともに、遠路はるばる会いに来てくれたのだ。