アフリカで作って日本で売る ベナンで奮闘する日本人女性の教え

ベナンで生地の買い付けをする川口莉穂さん


失礼を承知で言わせていただくが、ベナンに莉穂さんがいるというその光景は、こちらをなんだか不思議な気持ちにさせる。若くて素敵な女性が、欧米や東南アジアならともかく、こともあろうに西アフリカのベナンにいるのである。その組み合わせの意外性といったら、なかなかのものだ。

莉穂さんは、もともとJICAの協力隊隊員としてベナンに派遣され、アジョウンの小学校や幼稚園でマラリアの啓発活動や手洗いの仕方、ゴミの分別などを教えていた。その任期中に出会ったのが、ベルアンジュだったという。

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川口莉穂さんとベルアンジュ

「私がアジョウンに派遣されて1カ月後くらいだったのですが、ベルアンジュたちにナンパされたんです。ベルアンジュは当時まだ16歳。外国人女性は珍しかったので、ベルアンジュの同級生の男の子たちが私に声をかけてきたんです」

そんな出会いから意気投合した2人。慣れないベナンの生活でわからないことなどを、莉穂さんはベルアンジュに相談したりして、親交を深めた。莉穂さんがベルアンジュの家に出入りをするうちに、同じように出入りしていたシングルマザーと知り合う。彼女は仕立ての技術を持っているが、ミシンを持っていなかったので、仕事をすることができず、収入がまったくなかったという。

「ミシンさえあれば、彼女は仕事ができる。小さい子供を抱えていたし、彼女のために何かしたい。そこで、彼女にミシンを買ってあげようと、クラウドファンディングをしたんです」

JICAの協力隊の活動の合間に、日本に向けてクラウドファンディングを始めた莉穂さん。結果、目標額の30万円を大きく上回る73万円ほどの資金が集まった。それを元手にミシンを買い、さらには「土地だけは広い」というベルアンジュ邸の庭に、ミシンが4、5台置けるアトリエと莉穂さんのための小さな部屋を建てた。莉穂さんはそのアトリエに「シェリーココ」という名前をつけた。

さて、ミシンとアトリエは用意したものの、それで仕事がすぐにあるかというと、そんな簡単なものではない。ベナンでは、いまも多くの人がパーニュというアフリカ布で仕立てた民族衣装を着ている。それを仕立てるための仕立て屋がベナン国内にはたくさんあるのだが、その数が多すぎて、なかなか仕事が回ってこないという現状があったのだ。
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文=鍵和田 昇

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