早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授の入山章栄に話を聞いた。
ルイ・ヴィトンをはじめ70以上のブランドを束ねる、高級ブランド世界最大手、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)。20年1月に発表した19年12月期決算は、売上高が前期比14.6%増の536億7000万ユーロ(約8605億円)、純利益も前期比12.8%増の71億7100万ユーロ(約8605億円)の増収増益と業績は絶好調。市場評価も4年で株価が3倍近く跳ね上がっている。
LVMHグループ、それを率いるベルナール・アルノーはなぜ、これだけの成功を収めているのか。
米「Forbes」の世界長者番付の保有資産額上位を見ると、1位が米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、2位が米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、そして3位にLVMH会長兼CEOのベルナール・アルノーがランクインしている。それは、時代の変化を捉えた、まさに「現在」と「今後」を象徴している順位だと思います。
なぜなら、アマゾンやマイクロソフトは、言わずと知れた世界的なテクノロジー企業で、デジタライゼーションを通してイノベーションを起こしてきた企業です。人々は、同社のサービスを利用することで、生活や仕事が格段に便利になりました。つまり、世界中の人々に対して、最先端のテクノロジーを用いた利便性による「使用欲」を満たしてきました。例えば、なぜ、人々がアマゾンを利用するか、というと圧倒的に「便利」だからです。世界の人々の「使用欲」を最も満たしている企業の創業者が上位2人を占めています。
一方、LVMHはというと、ルイ・ヴィトンやフェンディ、リモワ、タグ・ホイヤー、ドン・ペリニヨン、モエ・エ・シャンドンといったラグジュアリー・ブランドを保有しているブランドグループ企業。同社は、製品はもちろんですが、無形の価値、いわゆる「ブランド価値」を提供する企業で、世界中の人々の「所有欲」を満たしています。「ブランド」の需要性がますます高まるなかで、「所有欲」の象徴とも言えるブランド帝国を率いるアルノーが3位に入ったことはとても面白い傾向だと思います。