こうした、真逆に見える両者がTOP3で並ぶ背景にあるのは、デジタル化により便利を追求した先にある「使用欲」過剰の反動で、歴史あるレガシーのブランドを求める「所有欲」の時代にも入ったことが挙げられると思います。
「所有欲」の時代をわかりやすく表しているのは、ジャン=ミシェル・バスキアをはじめとしたアートの価格高騰だと思いますが、それだけではありません。シェアリング・エコノミー時代になり、カーシェアリングができる時代ですが、ポルシェのマカンの販売が好調だというのもその一例かもしれません。
世界の人々の「使用欲」と「所有欲」をいかに満たすのか。「使用欲」一辺倒からバランスが変わりはじめたのが現在だと言えます。価値観のフェーズが変わりました。「使用欲」と「所有欲」が併存する時代になったと言えるでしょう。「所有欲」を象徴するブランドが重要になる、この流れは進んでいくと思います。
「価値」を最も知る男から学べ
経営者ベルナール・アルノーは、人々が無形の価値を所有する、体感することへの訴求が高まる「ブランド」時代に先駆けて、いち早くそれに目をつけていたことがまず優れていると思います。
そして、ブランド帝国を築いた手法、「M&A(合併・買収)後の成功手法」をさまざまなブランドで展開していった点も、経営者として優れている点でしょう。もちろん、ブランドの目利きもあると思いますが、ブランドをただ買収するだでは、LVMHのようなブランドプラットフォーマーになれるわけではありません。ブランド買収後の「どのように立て直していくか」という手法が優れていました。この手法は実に経営理論的です。
その手法は「(買収後にも)各ブランドに自由度を与えた」ということ。もともとラグジュアリー・ブランドの多くは、同族経営が多く、長きにわたる歴史とともにブランドを構築してきました。だからこそ、M&A後のPMI(買収後の統合)についても、短期的視点ではなく、長期的視点で、独立性を担保しながら行いました。
ブランドをそのまま残して、LVMHはブランドプラットフォーマーとして黒子に徹して前に出ない。そのため、買収されたブランドのファミリーや従業員もモチベーションが上がり、LVMHグループ入りしたことを喜ぶため揉めないのです。