東日本旅客鉄道が2018年2月、スタートアップへの投資や協業推進を目的にCVC、JR東日本スタートアップを設立した背景と戦略について聞いた。
JR東日本スタートアップは2018年2月、東日本旅客鉄道の完全子会社として設立した。同社は、オープンイノベーションによる共創活動を加速するために、スタートアップへの投資や協業推進を目的に設立されたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)だ。
同社が19年に行ったスタートアップ企業との資本業務提携、協業、実証実験は、36件に上る(公表ベース、10月31日現在)。18年2月とCVC設立こそ後発ながら、すでに数多くの取り組みをスピーディに始めているのが特徴だ。
「社会インフラを支える鉄道や駅などのリアルネットワーク、グループの持つ事業の広がり、地域との結びつきといったJR東日本グループの持つ経営資源と、優れた事業アイデアや先端技術をかけ合わせる。それにより、未来をつくる新たなビジネスやサービスを創出し、豊かな暮らしづくりに貢献する」と同社社長の柴田裕はそのコンセプトを語る。
背景にあるのは、東日本旅客鉄道の経営ビジョン「変革2027」である。基本方針として、これからの10年について「ヒト(すべての人)の生活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値の提供」へと「価値創造ストーリー」を転換することを提唱している。その方針について、スタートアップをはじめ、オープンイノベーションにより実現させているのがJR東日本スタートアップである。
多様な取り組みを実現
連携や協業は、多様な取り組みが並ぶ。定額制で全国どこでも住み放題の多拠点コリビングサービスを提供するアドレスとの資本業務提携を行った。JR東日本グループの持つ交通インフラと定額住み放題をかけ合わせ、多拠点居住を推進し、関係人口の創出や地域活性化の促進を目指す。
また、フリーランスドライバーと荷主を即座につなぐ配送マッチングプラットフォームを運営するCBcloudとも資本業務提携契約を結び、鉄道・駅とかけ合わせて新事業創出を目指す。さらに、再生可能な新素材を開発したTBMと資本業務提携し、新素材を使用した傘を使ったシェアリングサービスを展開。傘シェアリングサービスを運営するNature Innovation Groupとも資本業務提携を結び、駅や駅ビルを起点にした傘のシェアリングビジネスで、駅や駅周辺の魅力と価値向上に取り組む。