「オリジナルの製法にこだわるのであれば、韓国や台湾の工場に製造を委託する道もあるとフィリップたちに提案した。しかし、日本が生んだブランドを再生するのであれば、日本の工場で製造したいという二人の決意は固かった」と小澤は話す。
その後の交渉により、復刻版シャープマンの製造は、広島に本拠を置くハンドメイド・スニーカー企業「スピングルカンパニー」が手掛けることになった。
復刻版シャープマンは素材や製法にこだわりぬき、1970年代のオリジナル版を忠実に再現している。写真提供:Koyo Bear
フィリップらがドイツで立ち上げた「Koyo Bear」は2020年初頭に小澤雄二・小川淳也と渋谷に支所を開設。ベルリンを代表するスタートアップ企業「サウンドクラウド」創業者のエリック・ウァフルフォルスからも資金を調達し、初期ロットの製造を本格化させている。
スポーツアパレル分野では、最近ではナイキが「Just Do It」の30周年記念キャンペーンに、黒人差別に抗議して注目されたNFLのコリン・キャパニックを起用して成功を収めたように、消費者は力強いメッセージをブランドに求めている。
「僕らは30年間眠っていた日本の世界的プレイヤーのブランドを世界に送り出す。それは、ファストファッションの真逆を行くプロダクトになる。シューズを売るんじゃなくて世界の消費者に物語を届けていく」
東西冷戦の象徴だったベルリンの壁の崩壊から30年が経過した──。それとほぼ同じ期間、休眠状態にあった荻村伊智朗のシューズが今、アートとテクノロジーの交差点と呼ばれる街に変貌したベルリンの起業家たちによって再生され、世界をつなごうとしている。
復刻版シャープマンは2020年の東京オリンピック開催を前に、公式サイトと一部の限定ストアから発売される。価格などの詳細は間もなく、公式サイトで告知される。