「公務員が広報誌をつくるのも、プロの編集者と同じように、お金をもらっている。そこにボーダーはない。だから、僕は彼らがつくる雑誌よりもいいものをと、いつも考えています」
こう語る佐久間だが、そのストイックなまでの姿勢の裏には、公務員に対する危機感とプロ意識があった。
埼玉県三芳町で広報を務める佐久間智之
捨てられた広報誌を見つけ一念発起
佐久間は、2011年4月から2018年5月まで三芳町役場で広報を担当し、民間企業への出向を経て、再びこの広報担当を務めている。広報担当になったきっかけは、介護保険を担当していた際、調査に行ったマンションのゴミ捨て場で、「広報みよし」がチラシに紛れて捨てられていたのを目にしたことだ。
「2つの意味で『もったいないな』と思いました。1つは、税金と資源の無駄。もう1つは、住民に対して、町の情報が届いていないということ。どうにか改善できないかと、心にずっと引っかかっていました」
広報誌は、町の「顔」のはずだ。簡単に捨てられてしまうようなものでよいのか。そんな思いを抱いたちょうど矢先、三芳町長が町のPRを進めようと、初の広報担当を募集するという話が舞い込んできた。
佐久間は、以前、ビジュアル系バンドのフライヤーを作成していた経験があった。このノウハウは広報誌に援用できるのでは──。そう考え、広報担当に立候補。町長に「日本一の広報誌をつくります」と宣言し、固い握手を交わしたという。
佐久間智之が手がける「広報みよし」
しかし、ことはそう簡単ではなかった。当初は、広報誌のタイトルをローマ字に変えただけで、「前のほうが良かった」と住民から苦情が殺到。そこで、表表紙はローマ字、裏表紙はひらがなにして、裏からも表からも読める「両開き」に変更した。
画期的なアイデアかと思われたが、余計に混乱を招いてしまうという結果に。「広報誌を手に取る人たちのことを、よく考えていませんでした」と、佐久間は当時を省みる。