この快挙の裏には、サムスングループ創業者イ・ビョンチョルの遺志と、「Kプロダクト」の持続的輸出に向けた尋常ならざるともいえる投資、そして「20年間の赤字決算」があった──。「パラサイト 半地下の家族」がカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞(昨年7月)した際、「フォーブス韓国」本誌に掲載された記事を以下、転載する。
ポン・ジュノ監督演出の映画「パラサイト 半地下の家族」が、カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞し、韓国映画100年史上初の輝かしい快挙を成し遂げた。この受賞は、これまでも韓国映画のグローバル展開を一手に担ってきた投資・配給会社CJエンターテインメント(現会長はサムスングループ創業者でもあるイ・ビョンチョルの孫、イ・ジェヒョン)の文化事業の功績でもある。
最多4部門を受賞した映画「パラサイト 半地下の家族」配給元「CJ」イ・ジェヒョン会長/写真:CJ
1995年「ドリームワークス出資」が快挙の布石
「『パラサイト』は大きな冒険だった。ユニークで新しい映画を作りたかった。アーティストたちが実力を発揮できるよう支援してくれたCJエンターテインメントに感謝しています」
第72回カンヌ映画祭で、韓国映画史上初の最高賞パルム・ドールを受賞したポン・ジュノ監督は、閉会式でこう感想を述べた。「パラサイト」は作品自体の芸術的完成度が高く、韓国映画の水準を世界に知らしめた。商業的にも勢いがつき、192カ国への海外先行販売という韓国映画史上の最高記録を更新もした。これはパク・チャヌク監督「お嬢さん」(2016年)の最多国販売記録であった176カ国を優に超える数だ。韓国国内でも何度も鑑賞する観客が続出、興行1000万人を突破するメガヒットとなった。
韓国映画業界はこの快挙を、1995年に米ハリウッドスタジオ・ドリームワークスへの出資から始まったCJのエンターテインメント事業が、25年ぶりに実を結んだものと評価している。
CJは、1997年に映画「インシャラ」で投資配給事業を本格化した後、現在までに韓国映画320作品を投資・配給してきた。歴代カンヌ映画祭だけでも合計10作品を出展するなど、韓国映画を世界市場に売り込むことへの同社の情熱は今に始まったことではない。
CJが扱ってきたポン・ジュノ監督作品は、同監督のフィルモグラフィーの中でも、「殺人の追憶」「母なる証明」「スノーピアサー」、そして今回の「パラサイト」など骨太な作品が多い。