英国としては、離脱に伴う激変を緩和するための11カ月の「移行期間」中に、できるだけ多くの貿易協定を新たに結ぼうとするだろう。経済成長率の上位15カ国のうち8カ国があるアフリカは、その重点地域だ。最近開かれた英・アフリカ投資サミットでも、合計で80億ドル(約8800億円)近くの商談がまとまっている。
英国とアフリカの貿易額は減少傾向にあり、英国の貿易総額に占めるアフリカの割合は2012年度の4.2%から18年度には2.0%まで落ち込んでいる。同年度の対アフリカ貿易額は460億ドル(約5兆500億円)だが、比較のために挙げれば同年の中国の対アフリカ貿易額は2040億ドル(約22兆円)に上る(中国商務省調べ)。
英国はこうした傾向を反転させたいと望んでいる。ビジネスニュースサイト「カルチャーバンクス」が伝えたところでは、首相のボリス・ジョンソンも、天然資源も豊富なアフリカ諸国との経済関係をより緊密にしていきたい考えだ。
英政府によると、アフリカの11カ国と新たに結んだ貿易協定によって、対アフリカ貿易額の43%がカバーされる見通しだという。EUのデータでは、18年の英国からアフリカへの商品輸出額は約100億ドル(約1兆1000億円)だった。
英国企業がアフリカ諸国で事業を拡大すれば、アフリカ諸国はその知識やスキル、技術から大きなメリットを得られると期待できるほか、直接投資という形で資金も入ってくる。一方、アフリカ企業112社がロンドン証券取引所(LSE)に上場しており、アフリカ企業にとっても英国は域外で最も重要な拠点となっている。
利益は中国への債務返済の原資に?
一部のアフリカ諸国は英国のEU離脱から打撃を被るかもしれない。中でも、英国の旧植民地で、英国にとってアフリカで最大の貿易相手国の南アフリカは、影響をもろに受けそうだ。南アフリカのいくつかの企業は、ヨハネスブルクとロンドンの両方に上場しているからだ。ちなみに、南アフリカのワイン輸出の10%は英国向けとなっている。
英国にとってアフリカで3番目に大きな市場であるケニアでは、英国が2番目に大きな輸出先の切り花産業への影響が懸念されている。フルブライトの報告書では、EU離脱による英経済縮小のあおりで、ケニアの切り花の輸出業者もある程度の打撃を受ける恐れがあると言及されている。ケニアの業者団体は、英国との新しい貿易協定がまとまらなければ最大で月に3900万ドル(約43億円)の損失が出る可能性があると試算している。