ジョブズに事業を売った84歳の連続起業家が「受験以外の世界」にこだわる理由

毎晩、学生たちのメンタリングを行った曽我弘

「安全に歩きスマホができる専用レーン」
「忙しい人でも犬を飼える24時間ケア付きアパート」
「目の大きさが小さく見えないメガネ」
 
これらは、すべて日本の高校生がたった2週間で考え出したビジネスアイデアだ。アメリカで20万人以上の高校生会員のいる世界ビジネスリーダー育成プログラム、DECA(Distributive Education Clubs of America、全世界高校生次世代リーダー育成同盟会)の日本版DECA JAPANが1月25日に広尾学園高等学校で行われた。日本で初めての開催となった。個人で応募した全国各地の高校生が9チームに分かれ、それぞれ自分たちのプランを英語で発表した。当日、80人の参加者の前で高校生グループによる白熱したピッチ大会が行われた。
 
DECAを日本で始めたのは、連続起業家の曽我弘、84歳。曽我は新日本製鐵を定年退職後、シリコンバレーに渡り、6、7社を立ち上げた。その1つで、マックコンピューターにインストールされているiDVDの元となったシステムを開発した会社(Spruce Technologies, Inc.)をスティーブ・ジョブズに売却している。

2010年に日本に戻り、数百社の大学発ベンチャーを見てきた彼が今一番力を入れているのは、日本の高校生のビジネス教育だという。なぜ、日本の高校生にDECAを提案したのか。日本に今足りないものとは。年齢を重ねても、エネルギッシュに飛び回る曽我に話を聞いた。
 

DECAとは




アメリカでは、高校生が受ける試験として、SATやACTが有名だ。これらはいわゆる日本のセンター試験と同じで、大学に進学することを目的としている学力試験だ。文章読解、数学、小論文などの項目がある。しかし、これらの試験は学力に特化している。そこで、DECAは学力とは別に将来のビジネススキルをはかる試験として誕生した。起業家やビジネスリーダー適性試験といっても過言ではないだろう。アメリカでは70年の歴史があり、世界中の3500の高校が登録されている。
 
DECAでは最大3名のグループで参加可能なビジネスプラン試験、マークシート試験、面接試験によって構成される。起業が将来の選択肢として当たり前となりつつある今、その可能性をはかる試験としてアメリカ政府も認めている。
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文=井土亜梨沙、写真=一般社団法人カピオンエデュケーションズ

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