日本人が1人もいない、ビジネスコンテスト
「世界中から来た15000人の高校生のなかに、日本人が1人もいないんですよ」
曽我はDECA JAPANを作ったきっかけをこう話し始めた。5年前、シリコンバレーで曽我はDECAを知った。
年に1度のDECAの世界大会では15000人が集まる会場で、ビジネスコンテストに熱狂する高校生たち。その時の映像を見て、まるでお祭りのようだったという。ドイツ、中国、韓国、などアジアも含め世界中から学生が集まっている。しかし、そこに日本人は1人も写っていなかった。
世界の舞台に挑戦する日本人の高校生がいないことにショックを受け、ここにいつか日本人が来られるように、と誓った。
また、曽我はシリコンバレーで何度も起業した経験から、大学発のベンチャー企業を数百社みてきた。しかし、曽我から見れば大学生の段階で教えても「遅い」という。
「彼らがターゲットにしているのは、実際の顧客ではなくて、ポテンシャルマーケットです。それではビジネスになりません。利益を生み出しながら、問題解決能力を養うためには、高校生の時から教育する必要があります」
DECAを見た衝撃と日本で直面する現実を胸に抱え、彼は高校生のビジネス人材育成プログラム「GTE(Global Technology Entrepreneur)イノベーションチャレンジ」をパートナーの能登左知と共に2016年に立ち上げた。GTEでは、合宿形式でシリコンバレーからビジネスのトップ講師を招き、高校生にテクノロジーをベースとした本格的なビジネスを教えている。大学初ベンチャーに将来つながる。そして今回DECAの日本版も立ち上げ、世界のビジネスリーダーたちとのつながりを作った。
GTEを始めた当初、日本の高校に協力を呼びかけたところ、「それは受験に役に立ちますか」と返された。受験と関係なければPTAが嫌がるかもしれない、と言われたこともある。曽我は高校生にビジネススキルをなぜ今学ばせる必要があるか意義を伝えることに苦労した。しかし、実際は興味のある高校生が自らネットで調べて応募したことにより、個人の応募だけで定員を上回り応募が殺到する結果になった。
そして、2019年4回目の説明会で曽我は「風向きが変わった」ことを実感した。180名に用意した説明会に高校生が180名、その親が60名も参加した。いい大学を卒業して、大企業に入るだけで子供は本当に幸せになれるのか。まだ数は多くないかもしれないが、「受験が全て」ではなくなっている傾向を熱心に話を聞く親から感じたという。