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電通総研内のクリエイティブシンクタンクによる連載「NEW CONCEPT採集」


救急車に道を譲る親切動画は「非常時」に分類できそうだ。先日の台風19号の際に、試合が中止となったラグビーW杯のカナダ代表チームが、台風被害で苦しむ釜石のボランティアに参加したことが記憶に新しい。

ドラゴンクエストのスマホゲーム「ドラクエウォーク」の対応も好意的に受け止められた。本来まちを歩きながら楽しむ本ゲームだが、外出せずに自宅で楽しむことができるイベントを実施し、ゲーム内の「重要なお知らせ」で台風情報を発信し注意喚起につとめたのだ。

チームや企業の場合だけではなく、カリスマ的な個人による「神対応」も話題になりやすい。松山千春は新千歳空港で遅延が発生しイライラする乗客を和ませるために歌声を披露した。飛行機が緊急着陸をすることになって高速バスでの移動を余儀なくされたキアヌ・リーブスが乗客を楽しませようとバスの中で冗談を言う姿が「いい人すぎる」と話題になったこともある。

カリスマによる神対応と対照的なものが、一般市民が「恩人」となるケースだ。叔父の葬式に向かった高校生が財布を無くしてしまい途方にくれていたところ、見ず知らずの人が6万円を渡し助けてくれたというエピソードを覚えているだろうか。

お金を渡した恩人は名前も名乗らずに少年のもとを去ってしまったため、お礼を言いたい高校生は本人を探している旨を地元紙に掲載した。そのニュースが話題となり2人は無事再会するというやさしい物語は、連日ワイドショーを賑わせた。

「態度の悪い客に困っているコンビニ店員を、後ろにいた客が気の利いた一言で救った」というスカッと系の恩人話もこのタイプに分類できる。

やさしい炎上の事例は「熱狂後」「非常時」「神対応」「恩人」の4タイプに完全に分類できるわけではなく、それらの要素が絡み合っている場合が多い。だがこの4つの指標で改めて自社のコミュニケーションを見直してみてはどうだろう。

たとえば2020年のオリンピックは「非常時」でもあるだろうし「熱狂後」も訪れるだろう。企業として「神対応」を見せてもよいし、あなた個人が誰かの「恩人」になるかもしれない。知名度も好感度も得られるチャンスだ。見返りを期待した「狙ったやさしさ」の是非はこの際問わないでおこう。仮になんらか見返りを期待したやさしさだとしても、親切行為が増えるのは、怒りやヘイトが増えるよりずっと良いことだ。

人に感情がある以上、炎上は仕方がないことかもしれない。だがもし人の心にダークサイドとライトサイドがあるのだとしたら、私はライトサイドを信じたい。あなたは、あなたの会社は、どうだろう。


鳥巣智行◎コピーライター。企業の広告コミュニケーションから商品開発まで幅広く手がける。長崎出身の被爆三世で、独自の平和活動に取り組んできたため、Bチームでの担当テーマは「平和」。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

文=鳥巣智行 イラストレーション=尾黒ケンジ

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