しかし、いざ自分が職場で良好な人間関係を築きながらプロジェクトを導こうとしても、なかなか思うようにはいかないものだ。そんなときにお勧めしたいのが、山口周著『外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』(大和書房)だ。
本書には山口氏の実体験を通じて、個性や職能が異なるメンバーとともにプロジェクトを成功へ導くための知恵の数々が説かれている。そんな著者の叡智に触れながら私が感じたのは、プロジェクトとは「祭り」だということである。
かつて予防医学者の石川善樹氏が「『祭り』は『間吊り』だ」と語るのを聞いたことがあるが、四角い布の真ん中をつまんで持ち上げると、四隅は中央へとつい寄せられる。同じように、真ん中にみんなで一緒に担ぐ神輿があると、人と人の心は一気に「間」を縮める。
プロジェクトをうまく進めるためには「『行動』を伝えるのではなく、『目的』を伝えることが重要である」と山口氏は唱えるが、まさに「目的」とはメンバーにとって目指すべき北極星であり、「間」を吊り上げるものに他なるまい。
「祭り(間吊り)」で参加者が一体感を得られるかのように、自分を世界の中心に据えるのではなく、共同体の一部であると考えることによって幸せになることができると説くのが、シリーズ累計200部を超える一大ベストセラーとなった岸見一郎・古賀史建著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)だ。
もはや私が多くを語るまでもないが、同書は哲人と青年との対話を通してアドラー心理学の教えを紹介する。ご存知の通り、アドラーは「すべての悩みは『対人関係の悩み』である」とし、自分を他人と比較することで「劣等コンプレックス」を抱くことになるという。そして、人は他人との関係を「縦」で捉えるから苦しむのであり、人と同じではないけれど対等であると、「横」で考えることで苦悩から解放されるとする。
それは、とりもなおさず、人間関係を「差」で捉えるのではなく、「間」で考えようということなのかもしれない。
人間は宇宙のなかにただ1人で生きているわけではない。絶えず他者と関係しながら社会の一部として存在している以上、仕事であってもプライベートであっても、「人間関係」というものを無視して生きていくことはできないだろう。
人と人との「間」についてしっかり向き合き合うことをせず、「間」を抜かして「間抜け」な人生を送らないためにも、ぜひとも読んでいただきたい3冊だ。
連載:クリエイターの本棚
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