中高一貫の「灘」では部活動も中高一緒だが、昨年4月の中学新入生180名においては、10名がアマチュア無線研究部に入部し、ロボットプログラミングを学ぶチームに属している。そして、ロボットプログラミングの世界大会への出場も狙っている。
全国の小学校では、この4月から「プログラミング教育」が必修となる。ところが、算数や理科のように、学年ごとに何を学ぶのかが国の指針で決まっていない。そのため、ITに詳しくない先生や親たちには「何をするの?」と不安が募っている。
中学3年生がシリコンバレーに
灘で、ロボットプログラミングのチームをつくったのは、現在、高校2年生の武藤熙麟(むとうひかる)だ。小学校時代からロボカップジュニアという、子どもを対象とした自律型ロボットのコンテストに出場しており、一緒に大会に出る仲間を灘でも探そうと立ち上げた。
ロボカップジュニアでは左下と右下のレスキューカーが被災者を救助できるかを競う
そんな彼が、今度は、小学生向けのプログラミング教室を開こうと、クラウドファンディングで資金集めに挑んでいる。彼自身が講師を務め、テキストも自ら作成する。なぜ、それほどまでにプログラミングに力を入れるのか、彼に聞くと、実に歯切れのよい答えが返ってきた。
きっかけは、中学3年生のときに、シリコンバレーで起業を体験する神戸市のプログラムに参加したことだという。大学生や社会人と一緒にこのプログラムに参加した中学生は、いまだに彼1人しかいない。
「シリコンバレーには“失敗を恐れない文化”がある」と聞いていた彼は、それを裏で支える「最適化手法」を発見したのだという。簡単に言えば、新しいビジネスを始めるときに、まずは仮説を立て、プロトタイプをつくって、顧客の反応を見る、という手法だ。
反応がいまいちなら、すぐに元の仮説を練り直す。それゆえ、このプロセスを続ける限り、無駄な間違いが起こらない。意図的なまでに、“決定的な”失敗を避ける回路が埋め込まれていると武藤は感じたという。
しかし残念ながら、日本企業に長くしみついてきたのは、これとは逆のやり方だ。過去の経験からじっくり吟味して進めるのだが、失敗したと判ると事業を止めてしまう。そんなことでは、日本には「失敗を恐れる文化」しか育たない。