キャリア・教育

2020.01.27 07:30

「小学生向けのプログラミング教室を」 灘高生が神戸市長に直談判

高校2年生の武藤熙麟(むとうひかる)とその後輩

東大合格者数トップ3といえば、首都圏にある開成、筑駒、麻布だが、最難関の「理Ⅲ」に限ると、神戸にある「灘」が他を圧倒する。東大理Ⅲと並ぶ難関の京大医学部の合格者数でも同校が群を抜く。

中高一貫の「灘」では部活動も中高一緒だが、昨年4月の中学新入生180名においては、10名がアマチュア無線研究部に入部し、ロボットプログラミングを学ぶチームに属している。そして、ロボットプログラミングの世界大会への出場も狙っている。

全国の小学校では、この4月から「プログラミング教育」が必修となる。ところが、算数や理科のように、学年ごとに何を学ぶのかが国の指針で決まっていない。そのため、ITに詳しくない先生や親たちには「何をするの?」と不安が募っている。

中学3年生がシリコンバレーに

灘で、ロボットプログラミングのチームをつくったのは、現在、高校2年生の武藤熙麟(むとうひかる)だ。小学校時代からロボカップジュニアという、子どもを対象とした自律型ロボットのコンテストに出場しており、一緒に大会に出る仲間を灘でも探そうと立ち上げた。


ロボカップジュニアでは左下と右下のレスキューカーが被災者を救助できるかを競う

そんな彼が、今度は、小学生向けのプログラミング教室を開こうと、クラウドファンディングで資金集めに挑んでいる。彼自身が講師を務め、テキストも自ら作成する。なぜ、それほどまでにプログラミングに力を入れるのか、彼に聞くと、実に歯切れのよい答えが返ってきた。

きっかけは、中学3年生のときに、シリコンバレーで起業を体験する神戸市のプログラムに参加したことだという。大学生や社会人と一緒にこのプログラムに参加した中学生は、いまだに彼1人しかいない。

「シリコンバレーには“失敗を恐れない文化”がある」と聞いていた彼は、それを裏で支える「最適化手法」を発見したのだという。簡単に言えば、新しいビジネスを始めるときに、まずは仮説を立て、プロトタイプをつくって、顧客の反応を見る、という手法だ。

反応がいまいちなら、すぐに元の仮説を練り直す。それゆえ、このプロセスを続ける限り、無駄な間違いが起こらない。意図的なまでに、“決定的な”失敗を避ける回路が埋め込まれていると武藤は感じたという。

しかし残念ながら、日本企業に長くしみついてきたのは、これとは逆のやり方だ。過去の経験からじっくり吟味して進めるのだが、失敗したと判ると事業を止めてしまう。そんなことでは、日本には「失敗を恐れる文化」しか育たない。
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編集=稲垣伸寿

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