ストーリーのあるコンテンツは、そうでないコンテンツと比較してWebページの滞在時間が5倍以上になるという研究もあり、マーケターはどうやって企業や商品のストーリーを消費者や顧客に伝えていくか、日々知恵を絞っている。
米国で進むビジュアルストーリーテリングの研究
ストーリーの「見せ方」に関する研究も盛んだ。動画やインフォグラフィックなどを活用して、ストーリーをビジュアライズ(可視化、視覚化)するもので、「ビジュアルストーリーテリング」と呼ぶ。
「Content Marketing World 2018」におけるビジュアルストーリーテリングのセッション(筆者撮影)
筆者が2018年に参加したコンテンツマーケティングのカンファレンス「Content Marketing World」(米国オハイオ州クリーブランド)では、「ビジュアルストーリーテリング」の部屋があった。
あるセッションでは、Webサイトの訪問者がクイズに答えていくと、ストーリーを体験できる「インタラクティブ・ストーリーテリングコンテンツ」のサービスがあるというプレゼンが展開されており、なんだか未来に来てしまったかのような寂しい感覚に襲われた。
日本におけるストーリーテリングやコンテンツマーケティングの研究は、米国に大きく水をあけられているというのが筆者の印象だ。
“未来”は日本にあった
ところがある時、ビジュアルストーリーテリングの“未来”を日本で見つけた。自動からくり人形師「ムットーニ」こと武藤政彦氏(63)の作品である。
本人が「ボックス・シアター」と呼ぶ箱の中で物語が展開されるムットーニ作品。かつて日産グループのCMで使われていたと聞けば、ピンとくる人もいるだろう。
スイッチを入れると、音楽とともに四角い箱の中で人形がゆったりと動き出す。夏目漱石や中原中也などの小説や詩を朗読する、武藤氏本人の声。時に複雑な光で舞台を照らす、温かい色のライト。あえて表現するならば、小さな劇場で繰り広げられる、とろけるような幻想的ショー。
武藤氏提供
“上演時間”は1回につき数分程度だが、壮大なオペラを見終わった後のような、満足感が得られる。「これはビジュアルストーリーテリングの未来だ」と率直に感じた。