たとえば大学案内をチェックしていると「ライフデザインセンター」や「ライフデザイン学科」をよく見かけるし、「ライフデザイン学部」を設置するところまで出ていることがわかる。
ライフデザインという言葉が広がる前から、一足先に多くの人の耳に馴染んでいた言葉として「キャリアデザイン」というのがあった。
当初は、就職を目指す学生に求められる取り組みを意味してきたのが、やがて社会人の転職に際しても使われるようになった。
そのキャリアデザインよりさらに幅広く、遠い先までを対象とするのであろう「ライフデザイン」もまた、ジワジワと広がってきている。働き方改革ブームを背景として、キャリアだけをデザインするのではもの足りないということなのだろう。
もっともこのライフデザイン、その意味するところはどうも曖昧だ。
"life"には生命から生活まで、いのちからくらしまで、人生から寿命まで幅広い意味があるし、"design"もカタカナ英語としてのデザインだけでなく、設計という語義も持つ(たとえば、建築家の仕事は意匠デザインと構造設計に二分されている)。
毎年開催される「グッドデザイン賞」の対象も、最近はモノだけでなく、ビジネスモデルや社会貢献活動といったコトまでが含まれる。デザインとは、相当にニュアンスの広い言葉だ。「ライフデザイン」となるともう、そのニュアンスはさまざまで、捉えどころがない。
この言葉に触れるたびに感じていた、そんな違和感を「ライフデザインの達人」にぶつけてみる機会に恵まれた。
2017年に日本語版の単行本が発売され、昨年文庫化もされた『スタンフォード式人生デザイン講座』(ハヤカワ文庫NF)の著者のひとり、ビル・バーネットが来日したのだ。