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『スタンフォード式人生デザイン講座』ビル・バーネット、デイヴ・エヴァンス著/千葉敏生訳/ハヤカワ文庫NF。単行本の題名は『LIFE DESIGN ライフデザイン スタンフォード式最高の人生設計』。原題『Designing Your Life──How to Build a Well-Lived, Joyful Life』(2016年刊)

「現代のデザインの起点のひとつであるドイツのバウハウス・ムーブメントでは『形態は機能に従う』と唱えられていました。美は機能に由来するという考え方ですね。現在では美しくあること、環境と調和することも機能のひとつだと見なされてます。私が『人生をデザインする』と言うときの『design』にも、形態のデザインと機能のデザイン(設計)という両方の意味が含まれてます」

彼らのライフデザインにおいては、経済的な基盤を確保してキャリアの階段を登っていくための(昭和期の日本語で言う)「人生設計」だけでなく、家族とともにコミュニティーの中で楽しく、そして美しく生きるための「人生デザイン」も重視されるというのだ。

「私たちのライフデザインは、『うまく生きるのはどうすればいいか』という機能の面の追究だけでなく、『よく生きるにはどうすればいいか』という美的な面の追究をバランスさせるものです。あなたの人生は、単なるエンジアリングの課題ではありませんからね」

実際、『人生デザイン講座』も、原題にあるサブタイトルは「よく生きることができる楽しい人生を築く方法」となっている。

ふたりの著者はいずれもアップルのプロジェクトに携わった経験を持つ、プロダクトデザインとエンジアリングデザイン(設計)の専門家。

ともに、スタンフォード大学の機械工学学科と美術学科の両部門にまたがる「デザイン・プログラム」の運営に関わり、ライフデザイン講座を人気講座に育て上げた。

バーネットは、アップル初のラップトップコンピューターだったPowerBookのデザインを担当しており、ソニーや東芝、日立製作所との協働のため、1980年代末から頻繁に日本を訪れていた経験も持つ。

労働時間が長く、家庭と過ごせる時間が短い一方、仕事への満足度が低く、男女の役割の差も大きい。

そうした日本の現状は、さまざまな調査結果だけでなく、ワークショップで出会う日本人から聞く話でも把握しているというが、日本をライフデザインの後進国とは捉えていないようだ。

「デザイナーとして日本のデザインを学んできました。建築家では、安藤忠雄を崇拝しています。日本のデザインは、その美はもちん、シンプルさや透明性などでも世界的によく知られている。日本人は一生懸命働くのと同時に、社会の中で楽しく、美しく生きていく、そういう人生をデザインする技術も持っているはずです」

よく生きる、美しく生きる、楽しく生きる。こうした目標は、ともすれば抽象的にもなってしまいがちだが、そこはプロダクトデザインと設計のプロが作り上げたライフデザイン術。目指す先とそこに至る道筋を具体化するための、実用的なプロセスが数多く組み込まれている。

文=岡田浩之 写真提供=Creative Live

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