5年間リターンゼロ。それでも巨額支援を続けるアートコレクターの日常

左から、アイベックス・コレクションのエグゼクティブ・ディレクター、デイビッド・ウィルソン。チーフ・キュレーターのキキ・キム。代表のアルバート・シュテッテン。



2014年から、代表と共にこのプロジェクトを進めてきたキキは、3人のコレクターのことをこう表現する。

「仕事をリタイアした私たちには、コレクターにならなくても、アートを楽しむ道はいくらでもありました。でも、私たちは、こうしてアーティストの人生にコミットするような生き方を選びました。プロジェクトを継続させるために、共に完成させる傑作以外の作品を売ることはあっても、彼らが仕上げる傑作が他の人の手に渡ることはありません」

キキは長年、写実主義の絵画を専門にしたキュレーターとして、アート業界に身を置いてきた。一方、デイビッドはキャリアの序盤を過ごしたオーストラリアで、史上最年少のファンドマネージャーになった記録ももつ敏腕ビジネスマンだ。

銀行や保険会社を主なクライアントに抱えるコンサルタント会社、ソフトウェア開発の会社経営を経て、2018年にアイベックス・コレクションに参画をした。

二人は、「僕たち夫婦と、このプロジェクトの発起人であり代表であるアルバート・シュテッテン(Albrecht von Stetten)のキャリアのバックグラウンドはそれぞれ異なりますが、幼少期から培ってきたアートへの愛情の強さだけは共通しています。アートをテーマに、テーブルにボトルワインがあれば3人で何時間でも話をすることができます」と笑いあう。

デイビットとキキをアイベックス・コレクションに迎え入れた、チェアマンを務めるアルバートとは、何者なのか。

そして、彼らから手厚いサポートを受けて、「傑作」の完成を目指すアーティストたちとは──。

160倍超の狭き門を通過するアーティストは、他と何が違うのか?

文=守屋美佳 写真提供=Ibex Collection

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