ビジネス

2019.12.19 07:30

隠し味は「Z世代」シフト 株価2倍、売上高26%増の老舗食品会社とは


とはいえ、カージアスにとって有利なのは、彼が長年、販売競争を戦ってきたことだ。この天性の事業家は、故郷のアラバマ州ハンツビルで子どもの頃から植物の種子を売っていた。食品大手マーズ時代には製品の、同じく食品大手のクエーカーオーツではシリアル製品のセールスに従事。

マコーミックに加わる以前にはザタレインズで12年間を過ごし、ブランドの売り上げを1500万ドルから1億2000万ドルにまで伸ばした。その後、マコーミックが03年に1億8000万ドルでザタレインズを買収すると、カージアスもこの会社に籍を移した。

2年前に巨額の買収で獲得したブランドの統合と活用に勤しむ傍ら、カージアスは側面の防備にも気を配っている。この半年間、マコーミックの科学者たちは人工知能(AI)を使った実験を行ってきた。40年間蓄積されてきた自社のレシピのデータを参考に、AIは香味の特徴や1万4000種類の素材の入手可能性、そして近い将来には、目標とする利益率に基づいて原材料を選び出す。消費者テストでどの原材料の組み合わせが人気を集めてきたのかも示してくれる。

調味料メーカーにとってはまるでSFだ。AIは新製品の開発期間を劇的に縮める可能性があるし、最近発売されたシートパンディナー(オーブンの天板1枚で仕上げる料理)用のスパイス製品でも舞台裏の科学を支えた。豚肉にバーボンとブラウンシュガーの味付けをする一品もその一例だ。

「アルゴリズムは会社全体として4〜6%の売り上げ増を予想している」と、カージアスは明かす。

「私は、その範囲の上限にもっていけるよう努めているところです」


ローレンス・カージアス◎米メリーランド州に本社を置く食品企業「マコーミック」のCEO。マーズやクエーカーオーツなどの食品大手を経て、2003年にマコーミックに入社。16年より現職。自身も料理をし、サンクスギビングデイ(感謝祭)では家族のために食事を用意するという。

マコーミック◎1889年創業の米調味料メーカー。塩、コショウからチリ、シナモン、ターメリックに至るまで幅広い種類の香辛料を取り扱い、世界最大級のマーケットシェアを誇る。2018年には、創業の地であるメリーランド州のボルティモアから同じ州内のハントバレーに新社屋を移転している。

文=クロエ・ソルヴィーノ 写真=アーロン・コトフスキー 翻訳=町田敦夫

この記事は 「Forbes JAPAN 「スポーツ × ビジネス」は、アイデアの宝庫だ!12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事