創業から20年、天井知らず。ストックホルム発スニーカーショップの成功の理由

ベルリンのSNEAKERSNSTUFF


SNSは、オンライン上での売上が全体の約8割を占める。だからこそ、各都市の店舗は、ショーケースとしての役割が大きい。

しかし、誰もがネット上で物を売買できる時代だからこそ、実店舗を主要都市に構え、顧客が実際に商品を手にとり、買い物をする経験を提供することでブランディングを図る企業は、すでに珍しい存在ではない。アップルやテスラも、その一例だ。

多額な広告費を投下することなく、消費者が自らのSNSアカウント上でシェアしたくなる商品の見せ方に注力する企業も然りだ。

店舗での売上げを重要視しない企業も多くなってきた中で、SNSが他のブランドと一線を画する成功を続ける理由は、大きく二つあるという。一つは、スニーカーの価値が時代と共に大きく変化していることだ。


12月14日にオープンする「Sneakersnstuff Tokyo」

シャネルやルイ・ヴィトンなどのラグジュアリーブランドのランウェイにスニーカーが現れ、日本でも、スニーカーで出勤する人が増えているように、スニーカーの存在感は年々大きくなっている。

しかし、このファッションの流れは、ただのトレンドとして表現できるものではないとペーターは感じている。

「近年、スニーカーを愛用する人が増えているのは、トレンドというより、時代変化に伴う自然現象と言った方が相応しいと思うんだ。例えば、ジーンズの歴史を振り返れば、かつては炭鉱作業服だった。それが現代ではどんなビジネスパーソンでも一本は持っているアイテムへと変化したよね。90年代にエアマックスが爆発的に売れたのは確かにトレンドだったけど、人が生活の中でより心地よさを求めるようになった現代では、スニーカーは、スニーカーヘッズだけのものではなくなったと感じているよ」

スニーカーをコレクションするような人でなくとも、自分に合ったスニーカーがあれば欲しいと思う人のパイは絶対的に増えたと二人は実感しているという。

他のブランドにはできない体験の提供

SNSの成功の秘密のもう一つは、各都市に合わせて店舗をローカライズすることにも表れる、徹底した企業文化の醸成にある。

1週間に50足もの新作が店舗に並ぶSNSにおいて、店舗スタッフの接客と、店舗での体験こそが、長年のファンをつなぎとめる生命線だ。マニュアルを頭に叩き込み、商品を押し売りするような店舗スタッフがいるショップにファンはつかない。

SNSの店舗に行けば、スニーカーに詳しいスタッフがマニュアルにはない接客で顧客を迎える。買い物をしなくても、店舗のすぐ隣にはSNSのエッセンスを感じることのできる場がある。
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文=守屋美佳 写真提供=SNEAKERSNSTUFF

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